食後にはいつも温かい緑茶を飲み梅干し(但し手作り)を食べていた
2024年9月に東京でオーソモレキュラー医学会のシンポジウムがあって、そこでサッカー元日本代表の鈴木啓太氏の講演が印象に残った。鈴木氏はこんな話をしていた。

「2004年アテネオリンピックのアジア最終予選のときのことです。ドバイに到着して3日後くらいから、一人また一人と下痢に苦しむ選手が増えていき、最終的には代表メンバーの23人中18人が下痢になりました。それも単なる下痢ではありません。猛烈にひどい水下痢です。しかも、もうすぐキックオフ。試合開始の5分前にまでトイレに行列ができていたことなんて、サッカー日本代表の歴史上いまだかつてなかったと思います(笑)冗談半分で「もうオムツつけてプレーするしかない!」とか言ってる奴がいて、笑うしかありませんでした(笑)
しかし僕は代表23人のメンバーのうちで、下痢をしなかった5人の一人でした。なぜ下痢をしなかったのか。僕はその理由をはっきりと言えます。
それは食後にはいつも温かい緑茶を飲み梅干しを食べていたからです。
静岡出身だからというわけでもないのですが、海外遠征にはいつも緑茶を持参します。それと、祖母から代々続く手作りの梅干しも持っていきます」
僕は初診の患者には、必ず「梅干しを食べていますか」と聞くようにしている。
上記の鈴木氏の話は、梅干しの食中毒予防効果の見事な実例になっているが、梅干しの効用はそればかりではない。
梅干しを食べると唾液分泌が促進されることは、みなさん経験上ご存知でしょう。しかし促進されるのは唾液分泌だけではなく、胃液分泌も含め消化系全般が活性化します。
以前の記事で、喘息、アトピー、リウマチは胃酸が出てないことが原因だと指摘したけれど、梅干しはこれらのアレルギー性疾患(自己免疫疾患)の改善の一助にもなる。

「梅干しを食べれば、唾液がわき胃液がわくということは、胃酸逆流の人にとってはかえって症状が悪化するのではないか?」と思う人もいるかもしれないけれど、研究の示すところはむしろ真逆です。梅干しを日常的に摂取している人では胃酸逆流の尺度スコアが低いことが分かっている。そもそも逆流性食道炎になるのは、胃酸過多ではなく、胃酸過少であることがその原因だ。これについては以前の記事で触れたので、ここでは触れない。
梅干しの腸内細菌叢に対する影響について、こんな論文がありました。https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-16K09066/16K09066seika.pdf
【背景と目的】梅干しを食べると胃内のピロリ菌が丸く変形して動かなくなり凝集して働きを失う効果(ピロリ除菌には抗生剤よりも梅干し!)が確認されているが、梅エキスの投与による腸内細菌叢への影響を検討する。
【方法】ピロリ菌陰性かつ胃粘膜に萎縮のない健常者をA群、ピロリ菌陽性かつ胃粘膜に萎縮のある者をD群として、梅エキスを4週間投与した効果を見る。
【結果】梅エキス投与により、D群でバクテロイデスが有意に増加した。
萎縮性胃炎のある人とない人とで、クロストリジウム属の組成に有意差があるとか、梅エキス投与によりバクテロイデスが増えたとか、いくつかの知見が得られたけど、重要なことは、梅エキスの投与により腸内細菌叢が変化したことです。
2022年7月日本人の腸内細菌叢を語る上で、重要な研究が発表されました。

4200人を対象とした大規模研究で、膨大な生活習慣や臨床情報、腸内細菌叢を統合した世界初の大規模マイクロバイオームデータベースを構築しました。この研究で数多くのことが分かりました。

たとえば、食事、生活習慣、疾患、薬剤、これらが腸内細菌叢に影響を与えることはもちろんだけれども、これらのうちどれが一番影響が大きいと思いますか?
「食事」かと思いきや、なんと、「薬剤」でした。
薬が腸内細菌に及ぼす影響は圧倒的で、食習慣、生活習慣、運動よりも3倍以上も強かった。
これは驚きです。食事とかライフスタイルの影響がもっと強いと思っていたら、薬がダントツというのだから。
では、どのタイプの薬が最も腸内細菌に影響するのか?
抗生剤?抗癌剤?
違います。
なんと、消化器疾患治療薬だった。要するに胃薬です。
これも驚きです。抗生剤は、腸内細菌を根こそぎダメにするし抗癌剤は腸内細菌を含め癌も正常細胞も全部ダメにするイメージだったけれど、そんな抗生剤よりも抗癌剤よりも、タケキャブ(胃酸抑制薬)のほうが腸内細菌叢に影響が強いというのだから、ものすごく意外です。さらに、糖尿病の薬(特にαグルコシダーゼ阻害薬)が腸内細菌に影響するなんて、考えたこともなかった。
さらに、こういう薬というものは、単剤で投与されるよりは、ちゃんぽんで使われていることが多いものです。つまり、糖尿の薬を飲んでいる人は、それだけを飲んでいるのではなく、コレステロールを下げる薬とか胃薬とか、他の薬も併用していることが多いものです(ポリファーマシー)。
そのような多剤併用は腸内細菌叢にどのような影響をするのか。
分かったことは、薬剤投与数が増えるにつれて、腸内の日和見感染症を引き起こす病原菌が増えることです。特に、腸球菌、クレブシエラ菌、アシネトバクター、肺炎連鎖球菌などが薬剤投与数とともに腸内で増加していた(正の相関)。
では、これらの多剤投与により変化した腸内細菌叢は、もう戻らないのか。それとも、薬をやめればまた回復するのか。
幸いにも、薬剤中止により腸内細菌叢への影響が減少することも同時に示されました。
上記研究の分析対象にはなっていないけれども、個人的には、ワクチンの腸内細菌叢に対する影響はかなりのものだと思っている。
たとえば、コロナワクチンを受けた人では、接種から9か月後に腸内のビフィズス菌が消失していたという報告があるし、

授乳育児中の母親がコロナワクチンを接種した場合、その児のビフィドロバクテリアがゼロになっていたという報告もある。

コロナワクチンではなく、小児の定期接種ワクチンによっても、腸内細菌は壊滅的なダメージを受けます。これについては以前の記事で触れたことがあります。
https://note.com/nakamuraclinic/n/n7001c4a7f5f7
とにかく、腸を健康に保つうえで大事なことは、まず、薬を飲まず、ワクチンを打たないことです。
病院なんて行くと、すごく軽いテンションでお薬を勧められます。
「胸がムッとする?じゃ胃薬出しておきますね~」
歯医者いっても、簡単に抗生剤出されますよね。
医者から軽く処方される薬を、軽く飲んではいけません。
逆に、積極的に行いたいこととして、毎日梅干を食べ、唾液や胃液で消化管を潤す。
たとえば、家族や友人たちと外食に行き、牡蠣を食べたとする。何人かが当たって、嘔吐や下痢の症状が出たりしますが、そういう状況であっても、全然おなかを崩さない人っているものです。
O-157騒動のときもそうでした。死者が出るほど重篤な症状が出る人がいる一方で、同じものを食べてもケロッとしてる人がいました。
上記の鈴木氏の証言もそうです。他の全員がばたばたと下痢で倒れる状況下でも自分だけは倒れない。どうすればそんなタフな胃腸になれるのか。
そのヒントのひとつが、梅干しです。除菌や抗菌薬の投与は決して根本解決にはなりません。真理は遠くにではなく、案外足元にあるものです。
ちなみに、鈴木氏がアテネ五輪に持参したという緑茶と梅干しは、相性的にも最高であることが実験で示されています。

論文を読むと、著者らは、梅干しによる胃酸分泌促進効果と、梅干しによる胃潰瘍治癒効果を、どのように記載すればいいものやら、困惑しているように思われます。というのは、世間一般の認識では「胃酸は胃潰瘍を発生させる悪いやつ」ということになっているのに、実際研究してみると、むしろ胃潰瘍を抑制しているという、世間の認識の逆の結果が出ているからです。
これは、結局のところ、世間の認識が間違っているということです。以前の記事で書いたように、「胃酸分泌こそ胃潰瘍の原因」であり、胃酸分泌を促進する梅干しは、胃潰瘍の救世主というのが本当のところです。
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