ついに「減税」へ舵を切った立憲民主党、その水面下で繰り広げられた抗争の”全内幕”
党内減税派の反発は枝野氏の想定をはるかに超えていた立憲内の対立
「減税」の可否をめぐる内部対立が激しさを増していた立憲民主党が、4月25日の臨時役員会で次期参議院選挙の公約に「時限的な食料品の消費税率ゼロ%」を盛り込む方針を決めた。
激しい党内論争を踏まえたうえで、野田佳彦代表ら慎重派が多かった党執行部も「物価高の中で選挙戦を有利に戦うためには、減税に踏み込まざるをえない」(有力議員)と判断したとみられる。
石破首相は政権維持へ、なりふり構わず
野党各党の「減税案」が出そろったことで、対応を迫られる自民・公明両党の中でも「何らかの『減税』に踏み込まざるをえない」(閣僚経験者)との声が急拡大。「夏の政治決戦」に向けて、与野党が“減税合戦”を展開する可能性が強まってきた。
もともと、自民・立憲両党は当初、党執行部が「減税」には極めて慎重な姿勢を示していた。「財源なき減税実施は、円の信頼性を損ない、百害あって一利なし」(党税制調査会幹部)との立場から、他党の減税論を「無責任なばらまき」と批判してきたからだ。
しかし、「トランプ関税」の影響が深刻になる中、国民の間で「減税」を求める声が拡大したのに伴い、両党内でも財政再建派と減税派の論争が激化。「このままでは党分裂にもつながりかねない」(立憲民主党幹部)という、抜き差しならない状況に陥っていた。
そもそも、少数与党であり、政策決定でも“迷走”を繰り返してきた石破茂政権にとって、「政権維持には、なりふり構わない参院選対策しかない」(自民党参院幹部)との声が日ごとに拡大し、党執行部への圧力も強まるばかり。そうした中、「石破首相自身も『減税派』」(官邸筋)との見方も出始めたことで、「連休明けにも税収増を財源とする一定額の減税実施に踏み込む方向」(政治ジャーナリスト)との声が広がりつつある。
これまで立憲内部には消費税に関して、①時限的な食料品の消費税率をゼロ%、②消費税率の一律5%引き下げ、③中低所得者の消費税の一部を税額控除し、控除しきれない分を給付する「給付付き税額控除」という3案が検討されてきた。これも踏まえて、「食料品の消費税をゼロ%にした後、給付付き税額控除に移行する」との案を盛り込むことでまとまった。
今回の決定に先立ち、野田代表は24日の党内論議で「消費税負担の軽減策に関しては、熱心な議論をしていただいた。真摯に受け止めて判断をしたい」と、党内多数派の意見を尊重する考えを示唆していた。
対立激化の発端は枝野氏の「分党発言」
今回の激しい党内対立は、減税反対派の旗頭とされる枝野幸男元代表のいわゆる「分党発言」が発端となった。枝野氏は12日に地元・さいたま市内で行った講演で、「減税ポピュリズムに走りたいなら、別の党をつくるべきだ」と発言。これに党内の減税派が猛反発し、「このままでは党分裂もあり得る」(若手議員)という異常事態につながっていた。
そうした中、野田代表は15日、記者団に対し「私は今の党内議論をポピュリズムとは思わない。物価高の問題を踏まえ、真剣な議論をしてもらっている」などと強調。「党分裂は絶対避けなければならないとの立場」(側近)から、事態収拾に腐心してきた。
というのも、同党の源流となる旧民主党も、今回と同様、消費税をめぐる党内抗争の果てに党分裂を余儀なくされ、政権を失った経緯がある。現在の立憲民主党の創設者である枝野氏としては、衆議院選挙で「減税」を掲げて議席を減らしたことへの反省を踏まえた“分党発言”だったが、「党内の反発は枝野氏の想定を超えた」(周辺)のが実情とみられる。
もちろん、民主党政権での首相時代に、当時野党だった自民・公明両党との党首会談で、現在の消費税率10%に道筋をつけたのは野田代表だ。ただ、民主党政権誕生の立役者だった小沢一郎氏との激しい対立が党分裂という最悪の事態につながっただけに、立憲民主党内でも「消費税をめぐって『分党』に言及するのはタブー」(有力ベテラン議員)との共通認識があったことは間違いない。
だからこそ、野田氏は「活発な意見交換をして、一定の時期が来たら集約する。結論が出たら従う政治文化をつくるのが私の役割だ」と繰り返してきた。野田氏を支える小川淳也幹事長も記者会見で「枝野氏は党の創業者だ」としつつ、「異なる意見に耳を傾けられるかが、党の懐の深さを体現することにつながる」などと党分裂の回避に腐心してきた。
その一方、小沢氏は過去の反省も踏まえてか、15日の自身のグループの会合後、枝野氏の発言について記者団に「非常に傲慢な印象を与える。俺は『剛腕』とはいわれたけど『傲慢』というのはあまりいわれたことはない」と皮肉った。そのうえで、「立憲だけが『減税をしない』というようなことで、この党の存立が図れるか」と主張した。
また、江田憲司元代表代行も同日、自身が会長を務める党内グループの会合で、「政策論議、政策提言、言論の自由を封殺しようというのは、看過できない大変遺憾な発言だ」と、強い言葉で枝野氏を非難した。
「増税派イメージ」の払拭はなお予断許さず
こうした経緯も踏まえて決まった今回の「消費税減税案」は、ほかの野党の案と比較しても独自性が目立つ。1年間か2年間の時限的な食料品の消費税ゼロ%を掲げたうえで、制度設計ができ次第、給付付き税額控除への移行を目指しているのが特徴だからだ。同党関係者は「物価高騰に苦しむ中低所得者層への支援強化を狙っている点は、他党と違う」と解説する。
いずれにしても、今後の“減税競争”の焦点は、政権与党である自民・公明両党や、世論調査の党支持率や比例代表投票先で立憲を脅かしている国民民主党などの「減税案」との“違い”を有権者がどう判断するかに絞られる。
これらに対し、野田代表は25日午後の記者会見で「自分は(増税決定の)“ザ・当事者”として今回の判断をした。必ず財源とのセットとして国民の理解を党としてのワンボイスで求めていく」と力説。併せて「政局でなく大局を見ての判断で、決して選挙目当てのばらまきではない」と繰り返した。
今回の立憲の対応によって、これまでの増税派というイメージの払拭につながるかがカギを握りそうだ。
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野田代表を抱く立憲は減税公約を掲げ、議席数を増やしたとしても選挙後公約を
反故にする可能性も捨てきれないのであまり当てにしないほうが良さそうです。
あの財務省が「はい、そうですか」というはずがありませんから。
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