ジャンクフードや超加工食品中心の食生活が怒りや不安を誘発する可能性
ジャンクフードには微量栄養素が不足している
Junk food and the brain: How modern diets lacking in micronutrients may contribute to angry rhetoric
https://theconversation.com/junk-food-and-the-brain-how-modern-diets-lacking-in-micronutrients-may-contribute-to-angry-rhetoric-170863
カプラン氏らは、「私たちの社会の多くが『脳の飢餓』を経験しており、人々の認知機能と感情調節を損なっていることを認識しています」と述べていますが、これは人々が空腹でいら立っているという意味ではないとのこと。日本をはじめとする先進国に住む人々の大半は、十分な量のタンパク質、脂肪、炭水化物を摂取しており、飢餓に苦しんでいるわけではありません。
しかし、現代社会では塩分や糖分、脂肪などを大量に含む超加工食品を中心とした食生活の人も多く、これらの人々はミネラルやビタミンといった微量栄養素が不足しがちだとのこと。超加工食品にはソフトドリンクやスナック、ナゲットなどが含まれており、一般的にこれらの超加工食品には微量栄養素が少ないそうです。
カナダで行われた2004年の調査では、全ての年齢層が摂取するカロリーのうち48%が超加工食品からのものであることが判明したほか、アメリカでは2~19歳の子どもたちが摂取するカロリーの67%が超加工食品由来との研究結果や、成人でも超加工食品由来のカロリーが57%を占めるとの調査結果が報告されています。多くの人々は食生活が肥満や糖尿病、心血管疾患などに影響すると認識している一方で、栄養の偏りが脳に与える影響についてはあまり認識していないとカプラン氏らは指摘しています。
超加工食品に偏った食事や微量栄養素の欠乏がメンタルヘルスに及ぼす影響については、すでに科学的な研究結果が多数報告されているとのこと。カナダ・スペイン・日本・オーストラリアなどで行われた多くの研究が、健康的であまり加工されていない食事をとる人々は、超加工食品などに偏った不健康な食事をしている人々よりも、うつ病や不安の症状が少ないことを示しています。
また、食事とメンタルヘルスについては一時的な相関関係についての研究だけでなく、長期間にわたる影響を調べる縦断研究も多数行われています。合計8万9000人以上の被験者を10~15年にわたり追跡した日本の研究では、健康的な食事をとる人々の自殺率は健康的でない食事をとる人の約半分であり、食事パターンが自殺リスクの低下に関わる可能性が示唆されています。子どもたちを2年間にわたり追跡したカナダの研究でも、食事パターンによって2年間における精神障害の診断率に差が出ることがわかりました。
さらに、不健康な食生活をしていたうつ病の人々に対し、全粒粉・果物・野菜・ナッツ・豆類・シーフード・オリーブオイルなどを豊富に使う地中海スタイルの食事に切り替えさせる介入を行った研究もあります。この実験では、通常の治療に加えて食事をより健康的なスタイルに変更した患者の約3分の1で、介入開始から12週間後にうつ病が寛解したとのこと。一方、通常の治療のみを行ったグループでは寛解率が10分の1未満だったほか、健康的な食事をとったグループでは毎週の食費が約20%減少したそうです。この結果は、「超加工食品を食べることは食費の節約につながる」という神話を払拭する役に立つとカプラン氏は述べました。
代謝を制御してセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を生産するために、脳は少なくとも30種もの微量栄養素を必要としています。いら立ちや瞬間的に爆発する怒り、不安定な気分といった精神的な問題が微量栄養素の摂取で改善できるという証拠は、微量栄養素のサプリメントの効果を調べる研究や、ADHDの子どもを対象にした研究から得られています。
カプラン氏らは、「証拠は明らかです。十分な栄養を持つ人々は、よりストレスに耐えることができます。『隠された脳の飢餓』は、感情的な暴発や攻撃性、公共の場における無礼な発言といった問題に影響する、自分で変えることができる要因の1つです」と述べました。
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