ポルトガルで食糧配給が検討される:「今後の食糧貧困は、見たことのないレベルに達するでしょう」
迫りくる世界食糧危機の足音
対ロシア制裁の反動で急速に悪化している世界の食糧状況ですが、ドイツなどでは、すでにスーパーなどで食用油と小麦粉が品薄になっていることを以下の記事で取り上げました。
ドイツで食用油と小麦粉がスーパーから消滅。イギリスでは家庭の電気代が一気に6倍に
地球の記録 2022年3月16日
ポルトガルでも、今後の食糧状況が厳しい見込みとなっていることがポルトガルのメディアで伝えられていることを知りました。
ただ、他のいくつかのヨーロッパもそうですが、今回のウクライナ問題以前に干ばつや、あるいは気温の問題などで「気候そのものが農作に良くない」ようです。
ポルトガルのフードバンクの当局者は、「今回の食糧貧困は、私たちがここ数年で見たことのないレベルに達するだろう」という表現を使っていまして、今後の見通しは厳しいものとなっているようです。
また、人が食べる穀物と共に、動物の飼料も主にトウモロコシなどの穀物ですので、その価格上昇と共に食肉価格も激しく上昇していくだろうと書かれていて、それどころか、「畜産業界の崩壊」という表現も出てきています。
そのポルトガルの報道をご紹介します。
食糧緊急事態の危機に瀕しているポルトガル
Portugal on brink of food emergency
Portugal Resident 2022/03/11
ウクライナでの戦争は、スーパーマーケットの食糧価格を数日以内に 20〜 30%上昇させるだろう。フードバンクは社会システムの完全な崩壊を恐れている。
ウクライナでの戦争、燃料費の急増などによる食糧供給の緊急事態にあるのはポルトガルだけではないが、ポルトガルの食料輸入への依存度、そして高い貧困率のために、わが国は特に大きな影響を受けると見られる。
Expresso (ポルトガルの新聞)は、この渦巻く危機に警鐘を鳴らしている。これは、生きている記憶の中で最悪の事態であり、国内の干ばつによってさらに悪化していると Expresso は述べている。
農家、食肉生産者、酪農家、パン屋、養鶏農家、および食品部門内のすべての業界は、このように積み重なった問題を見たり経験したことがない。
大きな障害の 1つは、ロシアとウクライナが世界の主要な穀物供給国の 2つであり、「食料生産に不可欠」であるということだ。これらが現在制限されているため、価格は急騰しており、すべてのプロセスがより「複雑」になっている。
ポルトガルでは、干ばつのために実行可能な牧草地のある土地が減少しているため、農家は牛用の乾燥飼料を購入することを余儀なくされている。
さらに悪いことに、乾燥飼料自体が 4月までになくなる可能性がある。
Expresso によると、基本的な日用品のコストは、今後数日以内に 20%から 30%増加し、「多くの低所得世帯がそれらにアクセスできなくなる」としている。
「この食糧貧困は、私たちがここ数年で見たことのないレベルに達するだろう」
フードバンク「飢餓に対抗する食糧銀行」の代表イザベル・ヨネト氏は、「この食糧貧困は、私たちがここ数年で見たことのないレベルに達するでしょう」と同紙に述べている。
ポルトガル農業連盟の会長は次のように同意する。
「戦争が勃発して以来、悪化しているエネルギーとディーゼルのコストの増加に伴い、損失を被らないように、トウモロコシ、野菜、いくつかの果物などのさまざまな季節の作物の生産をあきらめる農家の方々が出てきているのです」
「そして、価格が上がる上に商品自体が不足するでしょう」
ポルトガル農業連盟の会長は「配給の宣言」を検討していると述べた。
「パスタ用の小麦粉など、一部の製品の在庫が非常に少ないため、今後 1〜 2か月で、70年代に起こったような配給制を導入しなければならない可能性があります」
肉の価格は30%上昇する
トウモロコシは、人の食料であるだけではなく、動物飼料の主成分でもある。ポルトガルの動物飼料産業協会の事務局長は、Expresso に次のように語っている。
「これは、動物飼料の価格が 25%から 30%増加することを意味し、生産者はそれを買う余裕はありません。畜産業界が崩壊する可能性があります」
言うまでもなく、これらの上昇は消費者への価格に反映される。
ポルトガル人が最も消費する肉は、豚肉だ。ポルトガルの豚生産連盟のダビデ・ネベス氏は、今後数日で価格が 30%以上、上昇する可能性があるという。ネベス氏は、業界には 4月までの十分な動物飼料しかないという。
「その後、私たちは動物に与える餌がなくなります。つまり、食肉が消えることにつながります」
「緊急の措置が取られなければ、ポルトガルで飢餓の復活が見られるでしょう」
と警告した。
牛乳に関しては、ポルトガルの牛乳生産者協会のカルロス・ネベス氏は、以下のように述べる。
「牛乳価格がどれだけ上がるかは、見積もることさえできません。ディーゼルがすでに 0.15セント増加し、さらに 0.20セント上昇した場合、牛の搾乳に使用される電力は毎日増加します。肥料のコストが増加していることにより、動物の飼料は、より高価となっています。状況は劇的になりつつあります」
ポルトガル政府は「食糧不足は想定されない」と強調する
政府は迅速に対応すると述べている。農業省大臣は「これまでのところ、食糧不足の可能性を予測する理由はありません」と述べている。
農業省は「地域政府と協力して、ボルトガルの食糧供給に関する恒久的な監視とフォローアップを実施しています」と続けた。
ウクライナから輸入されていた動物飼料用穀物に関する懸念については、「これらの原材料には、南米と北米にすでに連絡を取っている他の代替供給源があります」と声明は述べている。
小麦粉などの人が消費する穀物は、「主にフランスから輸入されており、この経路は安定しています」と農業省は述べた。
残りの食品については、農業省は「ポルトガルの生産を通じて、または欧州の単一市場の枠内で、それらの入手可能性に関しての圧力はありません」と強調した。
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