日本は食糧難の危機に直面するか?
ロシアは2022年3月7日、日本を非友好国と認定し、ロシア国内では非友好国への小麦の輸出を禁止する可能性について議論された。日本はロシア産小麦をほとんど輸入していないが、供給不足によって世界の市場の価格が高騰すれば、それにより日本は間接的な打撃を受けることになる。
2022年6月、日本の農林水産省は、小麦と大豆の生産量を増やすため、米の作付けを3万5000ヘクタール(収穫量にしておよそ17万5000トン)削減する計画であると発表した。こうしたすべてによって、日本の食糧事情が緊張したものになるという予想ができ、メディアもときおり、熱い論調でこのことについて報じている。
コメは足りるのか?
コメについて言えば、日本は国内生産のコメで需要を満たしている。2021年のコメの収穫量は760万トンであった。コメの輸入量は60トン、輸出量はわずか22800トンである。コメの消費量は820万トンと算定されている。
しかし、2021年、日本における国民1人あたりのコメの平均消費量は年間50.7キロである。
人口1億2550万人で計算すると、主食として食べる国のコメの消費量は630万トンという計算になる。残りの190トンは、酒、お菓子など、副産品の製造、また動物のエサなどの飼料用に使われる。
また日本には備蓄米があり、その量は、2021年11月には190万トンであった。このように、日本はコメの生産量が十分であることから、コメの需要には問題はない。この理由だけでも、日本が食糧難に陥る危険性はないと言える。
飼料用穀物
日本の肉(牛肉、豚肉、鶏肉)の平均消費量は年間1人あたり41.6キロで、全体の年間消費量は520万トンである。また2020年、日本では170トンの鶏肉、40万トンの牛肉、130万トンの豚肉が生産されており、合わせて400万トンで、これは消費量の65%にあたる。肉の輸入量は、鶏肉が100万トン、牛肉が80万トン、豚肉140万トンとなっている。動物の飼料にも穀物が使われている。日本は穀物を食料としてだけでなく、飼料用としても輸入している。
2021年の状況は次の表のとおりである。
生産量(1000トン) |
輸入 |
消費 |
うち飼料用 |
|
トウモロコシ |
4 |
15478 |
15400 |
11900 |
モロコシ |
– |
299 |
310 |
310 |
カラス麦 |
222 |
1131 |
1420 |
1050 |
小麦 |
1000 |
5493 |
6350 |
650 |
合計 |
1226 |
22401 |
23480 |
13910 |
米国農務省、海外農務局、2022年3月
日本は2340万トンの穀物を消費しているが、そのうちの2240トン、つまり95.7%を輸入している。このうちの59.4%が飼料用である。小麦の大部分はパンまたは麺の製造に使われ、10%は動物の飼料用に加えられている。日本の食にとって重要な製品である肉の製造において必要な穀物を、日本はほぼ完全に輸入にたよっている。その意味においては、輸入に困難が生じれば、国民の食生活に影響を及ぼす可能性はあるが、致命的なものとは言えない。
というのも、第一に、日本は穀物を主に同盟国から輸入しているからである。
2021年の穀物の輸入全体の内訳は、米国が1330万トン(59.3%)、オーストラリアが180トン(8%)、カナダが170万トン(7.5%)となっている。この3カ国からの輸入量は1680万トン、つまり日本に輸入全体の75%を占める。小麦の供給でも、この3カ国が占める割合は98%に上っている。このように、ウクライナの紛争による穀物輸入の問題は、日本に影響を及ぼしていないということである。またオーストラリアと米国は日本に輸入されている牛肉のうちの80.5%を供給しており、豚肉については、米国およびNATOとEU諸国が97.4%を保証している。つまり、政治的な理由による食糧危機は日本では起こらないものと予測される。同盟国が日本の食糧を確保してくれるからである。
第二に、鶏肉や豚肉がきわめて必要になった場合には、穀物を基にした配合飼料から、食品廃棄物や草、海藻、その代替品などに移行することができる。
鶏肉と豚肉は日本で主に製造される肉である。こうした措置により、動物の飼育において穀物の供給削減の時期を乗り越え、国民に肉を供給することは可能である。
つまり総合的に見て、日本が食糧難に苦しむことはないというのが結論である。食料品が目に見えて不足するという予測を立てる根拠もない。日本で深刻な食糧難が起こるとすれば、それは厳しい海上封鎖が発動され、それが長期にわたって継続した場合に限られるのである。
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