岸田政権の「雇用制度大改革」の真意 中高年サラリーマン狙い撃ちで退職金、企業年金縮小の流れ
岸田政権が雇用制度の大改革に取り組もうとしている。年頭会見で「今年は賃上げをなんとしても実現する」と強調した岸田首相は、通常国会冒頭の施政方針演説で次のように語った。
「リスキリング(学び直し)による能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を、働く人の立場に立って加速します」
いきなり労働市場改革と言われても国民には何のことかわかりにくいが、岸田首相が異次元の少子化対策に続いて打ち出したこの改革こそ、国民生活に大きな打撃を与える内容なのだ。
経済アナリストの森永卓郎・獨協大学経済学部教授が指摘する。
「一部の大企業で大幅賃上げの発表が続いている本当の狙いはこの改革です。企業に賃上げを言ってもらうかわりに、政府は財界が要望してきた労働市場改革を進めて、企業が中高年社員のクビ切りや賃下げをしやすくして、退職金や企業年金も縮小し、なくしていこうということです」
自己責任で運用
三位一体改革の中でも中高年サラリーマンが狙い撃ちされるのが「労働移動の円滑化」政策だ。
低成長産業から人手不足の成長産業へと労働者の移動(転職)を促すという建前だが、“転職しやすくなる”と額面通りに受け取るわけにはいかない。それを口実に、「終身雇用」を前提にした日本の制度は「労働移動を阻害する」との理屈で見直しの対象にされている。
その代表が「退職金」と「企業年金」だ。これらは「後払い賃金」と呼ばれ、同じ会社で長く勤続するほど金額は大きくなり、受け取る時に税制上の優遇措置もある。日本企業の「終身雇用」を支えてきた制度だ。
しかし、政府税制調査会では、退職金への優遇税制は、「転職をためらう要因にもなりかねない」「人が移動しやすくなる税制にすべきだ」と指摘され、見直しがテーマになっている。
「サラリーマンが転職しやすくするために、退職金への課税を重くする」という本末転倒な理屈だ。森永氏が語る。
「退職金は年々凄い勢いで減り、大卒社員の退職金平均額はこの20年で1000万円以上も下がっている。今後は一般サラリーマンの退職金は完全になくしていく方向です。企業年金も以前は会社が運用リスクを負って定年後に決められた金額がもらえる確定給付型だったが、いまや会社が毎月一定額を拠出するから社員が自己責任で運用しなさいという確定拠出年金(企業型DC)が主流です。
これは年金と言いながら、60歳まで引き出せない給料を現役時代に毎月分割でもらっているのと同じ。その間、株で運用して暴落したら二束三文になってしまう」
岸田首相が「資産所得倍増プラン」を掲げて貯蓄から投資へと奨励しているのは、労働市場改革で退職金廃止の流れになるから、自分で投資して老後資産をつくれということだ。
※週刊ポスト2023年2月24日号
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岸田首相が提唱した「労働市場改革」と言うのは最終的にいかに労働力を安く済ませるか
という一言に尽きます。
中高年の首切りを容易にし、かつ退職手当を順次無くされたら放り出された中高年はその後
どう生活を確保するのか?
日本型雇用では新社員として入社した時点ではそれほど給与は高くないが、雇用期間が長く
なるにつれて給与が累進的に上がるように出来ている。ほぼそれが中高年の時にピークに
達するのだが、そうした中高年をその先数十年雇用していては金がかかりすぎるということ
なのだろう。だから、首切りをする。
そして退職した中高年を退職した時点より安く雇用できれば企業としてはウハウハだろう。
どうして、このような発想になるのかと言えば、株主が配当の増配を切望しているからです。
労働者の雇用に罹る費用を切り詰めてその分株式配当に回せと言うことです。
だから、会社の利益を労働者ではなく株主に多く回すことを考えると上記のような政策に
なるのだろうと思います。
経団連などから初任給や給与引き上げと引き換えにそのように要求され岸田氏はそれに応え
ようと画策しているものでしょう。
いかに岸田氏がダメ総理かわかろうというものです。
飴を大きく見せてムチを小さく見せ、国民を煙に巻くこの政権は早く崩壊して欲しいもの
だと思います。多くの問題はあったが、前菅政権や安倍政権の方がはるかにましだった
ような気がします。
岸田政権がいかに官僚の出す政策に忠実かわかります。
今の官僚はアメリカの方しか見ておらず、日本を将来のアメリカ型社会にしようと企んで
いる連中ばかりです。
それを何でもかんでも受け入れる岸田氏は大きな弱みでも握られているような気がします。
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