健康保険証は廃止の方向でも「マイナ保険証」の利用進まず 来秋の一本化に不安の声

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マイナカードの健康保険相運用反対 マイナンバーカード

健康保険証は廃止の方向でも「マイナ保険証」の利用進まず 来秋の一本化に不安の声

マイナ保険証の利用率わずか2.3%で現行の健康保険証にはるかに及ばないが、それでも進められる健康保険証の廃止!

健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化するマイナンバー法など関連法改正案が4月27日に衆院本会議で可決された。法案が参院で可決、成立すれば、保険証は2024年秋に廃止となる見通しだ。ただ、これまでのところ「マイナ保険証」の利用は進んでいない。医療現場などからは不安の声も上がっている。

ポイント効果でカード普及も…

マイナンバーカードの交付は、最大2万円のポイントを付与する普及策によって加速。総務省の発表では、申請件数は4月23日時点で9649万8283件、人口に対する割合は76・6%となり、前年5月1日時点の44・0%から大幅に拡大した。

政府は、マイナ保険証のメリットとして、顔認証付きカードリーダーによる自動受付の実現、過去の検診・薬剤情報の提供による手続きの効率化や診療の質向上などを挙げる。昨年10月には河野太郎デジタル担当相が、24年秋に健康保険証を廃止する方針を表明した。マイナンバーの健康保険証としての利用登録は、今年4月23日時点で5889万8024件となっている。

病院や診療所には4月からマイナ保険証対応が原則義務化され、顔認証付きカードリーダーなどのシステム導入が進んでいる。9月末までの期限付きで経過措置が設けられているが、対応を怠れば保険医療機関の指定が取り消される可能性もある。

24年秋に健康保険証が廃止されれば、マイナンバーカードを持たない人が保険診療を受けるには、新たに「資格確認書」が必要になる。有効期間が最長1年の更新制で、患者の窓口負担はマイナ保険証よりも割高になる見通しだ。

医療機関や薬局が申請すれば、顔認証付きカードリーダーが無償で提供される。厚生労働省が発表した4月23日時点の医療機関や薬局のカードリーダー申込率は92・1%だった。

こうした施策にもかかわらず、マイナ保険証の利用は進んでいない。厚労省によると、3月分の健康保険証の利用は全国で1億1537万2102件だったのに対し、マイナ保険証は267万743件で、わずか2・3%だった。

救急搬送時や災害時にメリット

ただ、ニッセイ基礎研究所の保険研究部主任研究員、村松容子氏は、「マイナ保険証が病院などで原則義務化となった4月以降は、準備が整う医療機関等が増えるので、利用も増えてくる」と予測する。

村松氏はマイナ保険証のメリットについて、救急搬送時でのスムーズな搬送や治療のための活用が検討されていたり、災害時に薬の情報が確認できたりすることを挙げる。さらに、検査や診療が異なる病院間で重複することを防ぎ、無駄な医療費の支出や体への負担増を抑制できると説明する。

一方で、「当初、マイナンバーは厳重な保管が求められたため、持ち歩きに抵抗がある人や、情報の紐づけに不安感を感じる人も少なくない」と指摘。今後の利用拡大に向けては、不安の解消を図りつつ、マイナカードの全体像や目的、メリットを含めて周知を進めることが重要とした。

高齢者施設は「管理にリスク」

健康保険証の廃止とマイナ保険証の一本化については、医療現場や高齢者施設からも懸念の声が広がっている。

医師、歯科医でつくる全国保険医団体連合会(保団連)は4月27日に国会で保険証廃止の撤回を求める集会を行った。

 
保険証廃止法案の撤回を求める保団連の集会に参加した医師ら=4月27日、衆議院第二議員会館(本江希望撮影)
保険証廃止法案の撤回を求める保団連の集会に参加した医師ら=4月27日、衆議院第二議員会館(本江希望撮影)

保団連は、全ての被保険者に保険証が発行・交付される従来の制度から、マイナ保険証への一本化で「申請主義」に大きく転換することによる影響を懸念。現行の健康保険証は残すべきだと主張している。

高齢者施設からも不安の声も上がっている。保団連が3月24日から4月10日に高齢者施設などに行った調査によると、利用者や入所者の健康保険証を管理している施設は83・6%だったが、マイナカード申請に対応できると回答したのはわずか6・5%で、暗証番号を含むマイナカードの管理についても、管理できると回答したのは6・0%だった。

 

集会にオンラインで参加した京都市の特別養護老人ホーム「原谷こぶしの里」施設長の介山篤さんによると、同施設の入所者では、65歳以上に交付される「介護保険被保険者証」などの証書原本の預かりは9割以上、75歳以上の「後期高齢者医療被保険者証」の預かりは10割に達している。入所者が医療機関を受診する際は、同行する生活相談員や看護職員らが保険証を所持し、医療機関に提出しているという。入所者の医療機関の受診は22年に計140件を超え、3日に1回ほどのペースだったという。

ただ介山さんは、マイナ保険証に一本化されれば、これまでの保険証とは預かる責任が異なるとし、「マイナンバーカードは紛失や個人情報の漏洩など管理のリスクをはらんでおり、保険証と同様に預かることはできない」と強調。認知症や精神疾患を持つ入所者も少なくないとし、その場合はマイナンバーカードを預ける意思を確認することも難しいと語った。(本江希望)

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