「少子化対策には増税が必要」は根本的におかしい…頭の悪い財務省を解体しなければ日本の未来はない
財務官僚に日本が滅ぼされる
※本稿は、泉房穂『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
財務官僚が賢ければ、増税なんてしない
日本の政治を動かしているのは中央省庁の官僚たちです。日本は民主主義国家ではなく、官僚主義国家です。さらにその官僚たちと大手マスコミ(大新聞、大テレビ局など)が結託して政府、官邸に有利な情報しか流しません。官僚主義をマスコミが補完し、決断すべき政治家たちは官僚たちにいいように扱われています。中央省庁の中でも一番の力を持っているのは、国の財布の紐を握っている財務省です。しかし、財務省の官僚たちは驚くほど賢くありません。本当に賢いのであれば、国民に負担を転嫁するような増税ではなく、予算のやりくりだけで新たな政策を実現できるはずです。財務省の官僚たちが考えているのは自分たちの保身であって、国民のことを中心に考えているのではないように思います。
まずやるべきは中央省庁の解体・再編
官僚主義を脱するには、まずはムダだらけの中央省庁を再編する必要があります。2001年、自公保連立政権時に一度再編されたことがありますが、あれは名前のすげ替えをしてお茶を濁した程度で抜本的な再編には至っていません。
2023年4月に新設されたこども家庭庁は縦割り行政の弊害を解消するといいながら、文科省と厚労省の横のつながりが強化されているとは言い難い状況です。厚労省は厚生省と労働省が統合されて生まれた省ですが、労働省はむしろ経済産業省と組んだほうが合理的かもしれません。
他にも「この省のこの部局は本当に必要なの?」というところがたくさんありますから、再編合理化を進めれば相当の予算も人員も浮かせることができるはずです。ムダの権化ともいえる財務省も一度解体、再編してみるべきです。
都道府県庁の半分近くの仕事はムダ
イギリスの歴史・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソン(1909~1993)は、その著作『パーキンソンの法則』で官僚組織の非合理性を指摘しています。官僚組織は肥大化していく特質を持ち、その「成長の法則」において、実際の仕事量に関係なく役人の数は増え続けていくものであると述べています。
要するに、放っておけば官僚組織はろくに仕事もせずに人数ばかり増えていくということです。聖域として守られ、長期間誰も手をつけることのできなかった中央省庁は、第三者によって組織全体の精査をする必要があると考えます。
市長を12年してきた感覚でいうと、市民のためにどうしても必要な市役所の仕事の量はそこまで多くなく、してもしなくてもいいことをしている面があります。都道府県の庁にいたっては、半分近くの仕事はムダなように思います。
ただ、私は「公務員を減らせばいい」という考えは持っていません。日本は人口に対する公務員比率は少ないので、国民をしっかりサポートするために必要ならば、公務員の人数は増やすべきだという考えです。
問題は公務員の人数ではなく仕事内容
大勢の人が暮らすこの社会の中で、公の仕事は欠かすことのできない重要な職種です。人類は独りぼっちで生きていける生き物ではなく、助け合いながら生きていかなければなりません。それを調整する公の機能として行政は不可欠です。ですから、当然そこで働く公務員もこの社会には必要な存在なのです。
今、問題なのは公務員の人数ではありません。官僚を含む公務員たちがしなければいけない仕事をせず、しなくてもいい仕事をしていることです。なおかつそのために湯水のごとく税金をムダ遣いしている点です。
私が市長になって以降、明石市のすべての仕事を見直して総人件費を削減しました。そしてその見直しが2020年くらいにほぼ終わったため、そこからは必要に応じて人数を増やしてさらなる市民サービスの充実を図ってきました。その結果、2020年を機に、明石市の人件費は少しずつ増加しています。
国民のために働く公務員がどれだけいるか
公務員は国民の税金で雇われているのに、国民のほうを向いて仕事をしている公務員はほんのわずかしかいません。その仕事が本当に国民のためかどうかわからないような仕事が多過ぎるのです。ですから、当の本人たちもどっちを向いて仕事をすればいいのかわかっていないのでしょう。
そういう意味では、中央省庁のみならず地方自治体も、今一度業務を整理し、組織体制や人員も見直していく必要があります。
2023年1月、自民党の甘利明前幹事長は少子化対策の財源として将来的には消費税率の引き上げも検討対象になると述べました。この発言は党内でも反発を招いたようでその後、「引き上げるとなると相当景気に影響する」という理由で改めましたが、腹の内では増税を言い出すタイミングを計っているのかもしれません。
国民負担を増やしても少子化が加速するだけ
日本の国民は、諸外国並みに十分な負担をしています。消費税は10パーセントですが、保険料負担(国民健康保険や介護保険など)は諸外国より重く、国民負担率は47.5パーセントと5割に迫っています。
少子化財源確保のために、社会保険料を増額させる案も出ていましたが、国民負担をこれ以上増やしたら、少子化はますます加速するばかり。国は社会保険料や増税で新たな負担を求めることなく財源を確保すべきです。
昔は消費税など必要ありませんでしたが、消費税が導入されて以来、3パーセント、5パーセント、8パーセント、そして10パーセントと税率は上がり続けています。昔は介護保険料も必要ありませんでした。それが他の保険料ともども次々と値上げになり、国民の生活は苦しくなる一方です。日本人の平均年収は、この30年間ほとんど上がっていません。収入は変わらず、出ていくお金だけは増えていく。これを「政治の失敗」と言わず、何と言えばいいのでしょう。
失敗の最大の原因は政府が「経済が国民を豊かにする」と勘違いしていることにあります。国民を豊かにするのは「政治の役割」であって「国民が豊かになってこそ、経済もまわる」のです。政府も閣僚も与党も官僚も、その順番を勘違いしています。
子育て政策がさらなる子育て政策を生む
私は市長としてまず「市民を支援する」ことで、地域経済を活性化させ、税収増を実現しました。子育て世代の多くは、日々のやりくりに四苦八苦しています。この世代を支援すれば、可処分所得が増えて地域経済の活性化にもつながり、市の税収も増え財源が生まれます。
実際、明石市は2013年度からの8年間で主な税収だけで32億円もアップし、市の基金は市長就任から11年間で51億円積み増しました。子ども施策を最初のきっかけにして、経済や地域の好循環が生まれ、さらなる子育て政策の充実につなげたのです。「少子化対策には増税が必要」という考え方は根本的に間違っています。
消費税などの税率は標準税率(10パーセント)と軽減税率(8パーセント)の複数税率となっています。私はこの軽減税率の適用対象の品目をもっと増やすべきだと考えています。
現状の軽減税率適用対象は「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」となっています。「国民の知る権利」と言うなら、なぜ新聞だけ対象となり、書籍などの図書類が省かれるのか理解できません。
まずは消費税の見直しを進めるべき
また、飲食料品に関しては、私は消費税をゼロにするべきだとも思っています。生理用品などの生活必需品の消費税もゼロにすべきです。
消費税を全部ゼロにしろとは言いません。ただ、多くの国民が苦しんでいる今の状況を政治の力で改善していくことは絶対に必要です。そのためにまずは消費税の見直しを進めていくことが必要です。
その一方で、外食したときの料金がこれほど安いのは先進国の中でも日本だけです。欧米に行ってハンバーガーを食べたら1人2000円は軽くかかります。日本の外食が安いということは、そこで働く人の給料も安いということに他なりません。日本で働く人たちの労働環境の改善、賃上げも同時に考えていく。国民を豊かにすることこそが、政治の重要な役割のはずです。
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