中国の科学者たちが、致死的な「変異エボラウイルス」を作成
しかも、バイオセーフティーレベル2の研究室でエボラを扱ったという…
きわめて高い致死率
中国の研究者たちが、「変異エボラウイルス」の作成に成功したことが中国の科学誌に掲載されていると、英デイリーメールが伝えています。
実験では、感染させられたハムスターのほとんどが死亡したとあり(実験に使われたハムスターの正確な数が曖昧であるため、正確な致死率は出せません)、どちらにしても、非常に高い致死率を持つもののようです。
今年 1月には、中国の科学者たちが「致死率 100%のコロナウイルスの作成」について発表していましたが、中国では、いろいろなウイルスへの取り組みが続いているようです。
・中国の科学者たちが、「ヒトのACE2受容体を遺伝子導入したマウスにおいて死亡率100%」のセンザンコウ由来コロナウイルスについて発表。それは脳に感染する
In Deep 2024年1月8日
記事の中で気になりましたのは、この中国のエボラの研究が、
「バイオセーフティレベル2の研究所で行われた」
ということでした。
バイオセーフティレベルというのは、病原体等を取り扱う実験室・施設の格付けで、レベル1からレベル4まであり、エボラウイルスや天然痘ウイルスなどを扱うには、最もセーフティレベルの高い「バイオセーフティレベル4」の施設で研究が行われなければならないのですが、この研究は、上から 3番目のバイオセーフティレベル2の施設で行われたようです。よりセキュリティが甘い施設ということです。
そのため、この実験では、実際のエボラウイルスを感染させるのではなく、口内炎ウイルスの一種を使って、このウイルスが、エボラウイルスのタンパク質の一部を運ぶという形式としたようです。
その結果、症状は、エボラとまったく同様の全身症状を見せ、ハムスターの 8割が死亡するという強い致死性を見せました。要するに、エボラウイルスと変わらない毒性のある病原体が作り出されたということになります。
ちなみに、日本でも「エボラウイルスをマウスに感染させる実験」が、東京の武蔵村山市にあるバイオセーフティレベル4の施設で行われています。なお、この武蔵村山市の施設は、私の住むところのわりとすぐ近くなんですよね(苦笑)。
漏洩とかは勘弁してほしいところですが、中国の変異エボラウイルスも外部に漏洩とかしなければいいですが…。
ここからデイリーメールの報道です。
中国の科学者たちがバイオセーフティー規則を回避するために変異エボラウイルスを作成 – 恐ろしい症状を引き起こし、ハムスターの群れを殺した
Chinese scientists create mutant Ebola virus to skirt around biosafety rules – and it causes horrific symptoms and kills group of hamsters
dailymail.co.uk 2024/05/06
中国の科学者たちが研究室でエボラ出血熱の一部を使ったウイルスを作成し、ハムスターの群れを殺害した。
河北医科大学の研究チームは家畜の伝染病を利用し、ウイルスが細胞に感染して人体全体に広がることを可能にするエボラ出血熱で見つかったタンパク質を加えた。
致死注射を受けたハムスターのグループは「多臓器不全を含む、人間のエボラ出血熱患者で観察されるのと同様の重度の全身疾患を発症した」と研究では共有されている。
特に恐ろしい症状の 1つは、感染したハムスターの目に分泌物が発生し、視力が低下し、眼球の表面にかさぶたができたというものだ。
感染したハムスターは目に分泌物を発生させ、視力を損なった。
この実験は再び実験室での漏洩の懸念を引き起こす可能性があるが、研究者たちは、 実験室環境でエボラ出血熱の症状を安全に模倣できる適切な動物モデルを見つけることが目的だと述べている。
この研究は、感染したハムスターが将来エボラ出血熱の蔓延と治療を研究するための適切なモデルとなる可能性があることを示唆した。
エボラ出血熱は、特別な高セキュリティ研究所であるバイオセーフティ レベル 4 (BSL-4) 施設で取り扱われる必要があるが、中国の研究室の多くは BLS-2 のみだ。
より低いセキュリティ設定でこの問題を回避するために、科学者たちは水疱性口内炎ウイルス (VSV) と呼ばれる別のウイルスを使用した。このウイルスは、ウイルスの侵入を助ける重要な役割を果たす糖タンパク質と呼ばれるエボラウイルスの一部を運ぶように設計された。これが宿主の細胞に感染する。
研究チームは生後 3週間のメスとオスのハムスター 5匹で研究をした。
メスのハムスターは、直腸温の低下と最大 18%の体重減少を示し、すべて 2~ 3日以内に死亡した。
5匹のオスのハムスターは体重が 15%減少し、遅くとも 3日半以内にこの病気により死亡した。
しかし、2匹のオスのハムスターは生き残り、体重は感染前より 20%増加した。
研究チームは死亡したハムスターから臓器を採取し、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、胃、腸、脳組織にウイルスが蓄積していることを発見した。
最高レベルは肝臓で、最低レベルは脳で見つかった。
「これは、水疱性口内炎ウイルス/糖タンパク質に感染した生後 3週間のハムスターがエボラウイルスによって引き起こされる視神経障害の研究に役割を果たす可能性があることを示す兆候だ」と研究チームは発表した。これは中国の学術誌「Virologica Sinica」に掲載された。
研究チームは、感染したハムスターたちは、急速な症状の発現、肝臓ショック、全身感染を示し、ヒトのエボラウイルス患者で観察されたものと同様の重篤な全身疾患を発症したと結論づけた。
彼らはまた、この実験により バイオセーフティレベル2 条件下でのエボラ出血熱に対する医学的対策の迅速な前臨床評価が得られ、研究は成功したと結論づけた。
世界保健機関(WHO)の 報告書によると、2014年から 2016年にかけて西アフリカの数カ国で発生した最後の大規模なエボラウイルス流行は致死率が高かったという。その 2年間で 28,600人以上が感染し、約 11,300人が死亡したと報告されている。
感染性ウイルスの検査は、治療と予防の画期的な進歩のために必要なことではある。
しかし、研究室での漏洩は常に発生しており、これらの事件は研究室外への感染拡大につながる可能性がある。
専門家たちは、咳やくしゃみによって感染を免れる呼吸器系ウイルス が集団内に広く拡散する可能性が高いことを確認している 。
今年 3月に発表されたデータによると、ウイルス等を研究する実験室からの漏洩事故は毎年発生しており、その中には結核や炭疽菌などの管理された病原体の漏出も含まれていた。
毎年 70から 100の外部への病原菌の漏洩が記録されている。
しかし、ニュージャージー州ラトガース大学の化学生物学者リチャード・エブライト博士は、この中国の研究について、研究室からの漏洩が公衆への広範な感染につながる可能性は低いと語った。
「バイオセーフティーレベル2での研究を進める前に、この新しいキメラウイルスがヒトの細胞に感染および複製せず、ヒトにおける感染性、伝播性、病原性のリスクを引き起こさないことを確認することが不可欠です」と同氏は述べた。
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