ウクライナ軍が、史上初のロシア領土への戦闘機による空爆を実施。「一線」を越えた可能性も
空爆には米国から供与された戦闘機が使われた可能性がある。これでもはや戦争は止められないものとなった。
英国スカイニュースが、「ウクライナ軍が、戦争開始以来、初めて戦闘機によるロシア領土内への攻撃を実施した」ことを報じていました。
これまでウクライナ軍は、無人機によるロシア領土内への攻撃は何度も繰り返していましたが、有人の戦闘機によるロシア国内への攻撃は、この戦争が始まってから初めてのこととなり、これでまた戦争はひとつエスカレーションしたことにもなります。
少し前に「核戦争はどのように始まるのか」という In Deep の記事で、アメリカの専門家の記事をご紹介しました。その方は以下のように書いていました。
ジェームズ・リッカー氏の寄稿文より
西側諸国の観測筋は、HIMARS、ATACMS、戦車の提供はロシアにとって越えてはならない一線であると単純に想定していた。しかし、ロシアはそれが越えてはならない一線であるとは明言しなかった。彼らは全体的なエスカレーションの脅威について警告したが、これらは具体的な越えてはならない一線ではなかった。
しかし、ロシア領土への直接攻撃は別の問題だ。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とプーチン大統領自身も、NATO がロシア国内での攻撃を助長することについて具体的な警告を発している。そこが違いだ。
…西側諸国は、自分が何をしているのか分かっていない無能で無謀な人々によって率いられている。彼らは火遊びをしていることに気づいていない。
実際、スカイニュースの報道の後、ロシアの RT は、以下のように書いていました。
ロシア RT より
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先週、ロシアが西側諸国の長距離兵器による攻撃を受けた場合、西側諸国の軍事資産に対して使用できる可能性のある相手に同種の兵器を提供する可能性があると警告した。この道筋は非常に危険な結果につながる可能性があると同大統領は付け加えた。
ロシア領土内への戦闘機による攻撃という、普通に考えれば、「一線を越えた」とも見ることのできる今回の攻撃に対して、ロシアがどのような態度を取るかは不明ですが、この攻撃が、米国を含む西側同盟国が、「ウクライナによるロシア国内への攻撃に NATO 供給の兵器を使用することを承認した」直後に起きていることから、戦争のエスカレーションがさらに拡大する可能性はあるかもしれません。
この戦争では、西側が常にロシアを挑発し続けているのですが、今回の件を受けて、ロシアがそれでも戦争の拡大の自制を守るのかどうかはわかりません。
スカイニュースの報道です。
ウクライナ軍機がロシア国内の標的に初めて攻撃
Ukrainian warplane fires weapon at target inside Russia for first time
sky news 2024/06/09
「被害状況の調査はまだ行われているが、直撃したことが確認されている」とウクライナ軍筋はスカイニュースに語った。
ハリコフ地方ヴォフチャンスクの被害を受けた施設。
ウクライナ軍関係者はスカイニュースに対し、ウクライナの軍用機が初めてロシア国内の標的を攻撃する兵器を発射したと語った。
情報筋によると、ロシア西部のベルゴロド地域で「ロシアの司令部」が 6月9日に攻撃を受けたという。
ベルゴロドはウクライナ北東部との国境に近い。
攻撃に使用された兵器の種類は、西側諸国の兵器であったかどうかも含めて、今のところ明らかになっていない。
米国とフランスは最近、ウクライナ軍がロシア国内の軍事目標を攻撃するために武器を使用することを許可されたと述べた。
ジョー・バイデン大統領が承認した新たなガイドラインによれば、ウクライナ北東部の都市ハルキフの防衛を支援するために、アメリカの兵器がロシア領土で使用される可能性がある。
英国の外務大臣キャメロン卿は、あまり具体的な発言はせず、ウクライナのジェット機から発射できるストームシャドー巡航ミサイルなどの英国の兵器をどのように使用するかはウクライナ側が決めるだけだと述べるにとどまった。
‘直撃’
匿名を条件にスカイニュースに対し、軍事筋は次のように語った。
「ウクライナ空軍の作戦部隊がベルゴロドのロシア軍司令部を攻撃した」
「被害状況の調査はまだ行われているが、直撃であることが確認された。これはロシア国内の標的に投下された初のウクライナ空軍による空中投下弾である」
ウクライナはロシア領土の奥深くまで複数回のドローン攻撃を行っている。しかし、ロシア国内の標的を攻撃するために軍用機が使用されたことは、ロシア側から新たなエスカレーションとみなされる可能性がある。
ロシア国防省は、自国軍がベルゴロド州でウクライナの無人機数機を撃墜したと発表した。これが同一の攻撃の一部であるかどうかは不明。
ウクライナはロシア船も標的に
ウクライナ軍筋はまた、6月8日の夕方、ウクライナ軍は、黒海からアゾフ海へ最近移動したロシアの揚陸艦に対して「協調攻撃」を実施したと述べた。
同情報筋によると、この艦艇は、ウクライナの攻撃により沈没または「使用不能」となったロプチャ級揚陸艦7隻のうち5隻目となった。
「今回の攻撃の成功は、ロシア軍が黒海でも東方でも自由に活動できないことを示した」と情報筋は付け加えた。
情報筋によると、ロシア軍はこのような船を使って、占領下のマリウポリ市に弾薬や物資を運び、最前線まで輸送しているという。
「今回の攻撃はロシアの弾薬や主要な軍事物資の輸送を阻止することで、進行中の戦闘でウクライナ軍を直接支援することになる」と情報筋は語った。
ステルス戦闘機が前線から400マイル離れた場所で別個の攻撃の標的に
一方、ウクライナの主要軍事情報機関は、部隊が前線から約 400マイル(640キロ)離れた空軍基地に駐留していた最新鋭のロシア軍機を撃墜したと発表したと AP通信が報じた。
使用された武器はすぐには明らかにならなかったが、飛行場がウクライナから遠いことから、ドローンによる攻撃を受けた可能性が高いとみられる。
AP通信は、これが確認されれば、ウクライナによる Su-57戦闘機への初の成功した攻撃となるだろうと付け加えた。
Su-57 はモスクワの最新鋭軍用機と言われる双発ステルス戦闘機だ。
ウクライナによる最新の攻撃の詳細は、AP通信が、米国上院議員と西側当局者の発言を引用し、ウクライナがここ数日、ロシア国内への攻撃に米国の兵器を使用したと報じたことを受けて明らかになった。
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