ゴラン高原:大戦争の瀬戸際

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ゴラン高原 戦争

ゴラン高原:大戦争の瀬戸際

攻撃の更なる激化は「地域全体をとんでもない大惨事に巻き込む大きな火種となる可能性がある」

2024年7月30日
ヴィクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook

 イスラエル占領下のゴラン高原にあるマジダル・シャムス村攻撃について、イスラエルの様々なメディアが表明した疑惑をレバノンのヒズボラが声明で全面否定した。7月27日、イスラエル・ロケット弾がマジダル・シャムスのサッカー場を襲い、子どもを含む12人が死亡した。

 マジダル・シャムスはアラビア語話者の村で人口約25,000人、イスラム教起源の共同体ドゥルーズ派の人々が住んでいる。ゴラン高原はシリア領だ。1967年にイスラエル軍に占領され、以来占領されたままだ。しかし、この占領と、イスラエルの行動は国際的には認められていない。

 ゴラン高原での悲劇は、一層大きな悲劇を情報から駆逐するのに成功した。ゴラン高原へのロケット弾攻撃直前に、ガザ地区南部の学校をイスラエル軍は砲撃していた。30人以上が死亡し、そのほとんどは子どもと十代で、負傷者は100人以上に上った。これにより、イスラエル国防軍によるパレスチナ民間人犠牲者の悲しいリストが長くなり、現在犠牲者数は4万人に近づいている。なぜか、パレスチナの子どもを本当に悲しむ人は誰もいなかった。彼らが「二流の人々」だからだ。

 ヒズボラの声明

 イスラエル軍拠点に対するヒズボラ作戦が続く中、ゴラン高原での事件は、イスラエル・ロケット弾がサッカー場に着弾した結果発生したとガザ地区と連帯しているレバノン抵抗勢力が国連に報告した。イスラエルのミサイル砲台とアイアン・ドーム・システムが標的を外して、マジダル・シャムスを攻撃したのはこれが初めてではない。例えば、7月10日にも同様事件が発生し、テルアビブは慌ててヒズボラを非難した。いつも通り、テルアビブが即座にヒズボラに責任転嫁したにもかかわらず、その後の評価で、7月10日のマジダル・シャムス事件の背景にイスラエル防空システムの故障があったことが判明した。

 時期や民間人標的の性質や爆発の威力から、レバノンに広く分布するドゥルーズ派共同体に対するこの新たな攻撃は再び疑惑を引き起こしている。これはレバノン民間人へのイスラエルによる致命的攻撃への報復として、イスラエル軍の拠点、時にはイスラエル入植地を10か月にわたり標的にしてきたヒズボラの日常的な作戦と矛盾する。ヒズボラは、この事件への完全な無関与を認め、流布されている全ての「虚偽声明」を否定している。同組織は声明で「マジダル・シャムス攻撃に関する一部敵対メディアや様々なウェブサイトの非難を、レバノンのイスラム抵抗運動は断固否定する」と述べた。

 ネタニヤフ首相の偽りの言い訳

 レバノン抵抗勢力の決意や誠実さや透明性やイスラエル占領の犯罪実績を考えると、嘘をついた経歴があるのはテルアビブだけだと専門家らは述べている。更に、テルアビブの行動に対する国際社会の厳しい非難を考慮すれば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と軍隊がガザ地区に対して開始した大量虐殺戦争は、説得力を持って真犯人を示している。最初の情報によれば、虐殺の過程で、イスラエル国防軍は約4万人のパレスチナ人を殺害した(犠牲者の多くは建物の瓦礫の下で行方不明だ)。最大1万人のハマス戦闘員を殺害したと、イスラエル軍は誇らしげに報告したが、イスラエル人が嘘をついていることが何度も発覚しているため、これは信じがたい。おそらく、彼らは5,000~6,000人のパレスチナ人戦闘員は殺害できたが、残りの30,000人以上は女性と子どもだ。イスラエルで彼らを悼む人はいるのだろうか? いない。全てのパレスチナ人は敵で、彼らは殺害されなければならないとネタニヤフは信じている。「今日彼らはパレスチナ人の子どもだが、明日はイスラエルの敵だ。」

 マジダル・シャムス事件後のイスラエル当局とメディアによる非難を受けて、ネタニヤフ首相はアメリカ訪問を切り上げてテルアビブに戻った。首相が閣僚理事会議長を務める予定だったとイスラエル・メディアは報じた。またレバノン攻撃について、ネタニヤフ首相が軍と予備協議を行ったとも報じられた。軍高官によると、攻撃に向けて、あらゆる準備が整っており、部隊はレバノン国境に近い北部に展開され、3倍の砲弾を搭載したメルカバ戦車が既に配備され、ロケット発射装置がヒズボラ陣地に向けられているという。

 レバノン政治家の見解

 最近の事件への関与をヒズボラが否定していることは、同組織が民間人を攻撃しない方針、特にイスラム教徒が住む村のサッカー場を攻撃しない方針によって裏付けられるをレバノン議会のナビーフ・ベリ議長が確認した。イスラエル軍が国際的に禁止されている武器を使用して、民間人、農業地帯、救急隊員、報道関係者を砲撃しているにもかかわらず、9か月以上イスラエルの継続的侵略にさらされているレバノンは(イスラエルによる露骨な違反にもかかわらず)決議1701号と交戦規則を遵守し続けていると国連レバノン特別調整官ジョアンナ・ヴロネツカとの電話会談でベリは述べた。

 ドゥルーズ派進歩社会党の元指導者ワリード・ジュンブラットは「ヒズボラがマジダル・シャムスの悲劇へのイスラム抵抗運動の関与を否定する声明を出したことを踏まえ、敵イスラエルが長年不和を煽り、この地域を多くの分裂に導こうと動いてきたと我々は確信している」と述べた。ドゥルーズ派は以前もこのイスラエル政策を混乱させており、ヒズボラ抵抗運動やイスラエルの犯罪と占領に反対する全ての人々と協力する用意があると、このベテラン政治家は付け加えた。「レバノン、パレスチナ、ゴラン高原の全員に対し、敵の破壊計画の枠組み内でのいかなる失策や煽動も避けるよう我々は呼びかける。戦争の拡大を防ぎ、侵略と発砲を直ちに停止する必要があることを踏まえ、占領下のパレスチナ、占領下のゴラン高原、南レバノンのいずれでも、民間人への攻撃を拒否し非難すると強調する」とジュンブラットは述べた。

 また「今回の出来事は、シリア領ゴランを、その地理的性質、宗教、家族の伝統から切り離そうとする卑劣で失敗した試みにほかならない。シリア・アラブ人としてのアイデンティティに反する共謀をドゥルーズ派は常に拒否してきた」とレバノン民主党党首でドゥルーズ派政治指導者のタラール・アルスランは強調した。声明で「偽りの国境を守るために地域を小国に分割することだけを目的とした、少数民族保護を装うイスラエルの計画の罠にゴランは、はまらない」と彼は述べた。

 攻撃の更なる激化は「地域全体をとんでもない大惨事に巻き込む大きな火種となる可能性がある」と国連レバノン特別調整官ジャニーヌ・ヘニス=プラスハールトとUNIFIL軍司令官アロルド・ラザロ将軍は警告した。両氏は双方に最大限の自制を呼びかけ、イスラエルとレバノン両国と連絡を取っていると付け加えた。匿名アメリカ当局者の発言を引用して、ゴラン高原での事件は「地域の多くの国々と軍隊が関与する戦争の引き金となる可能性がある」とアクシオスは報じた。

 ヴィクトル・ミーヒンはロシア自然科学アカデミー特別会員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/07/30/golan-heights-on-the-verge-of-a-big-war/

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