「正直、年間800万円かける価値はない」エーザイの認知症薬「レカネマブ」に専門家が警鐘…!
「レカネマブ」、世界の学者たちが「ほとんど効かないのでは?」
人類を悩ませてきた「アルツハイマー病」。その治療薬「レカネマブ」が実用化されてしばらく経つ。しかし、この薬への疑念を隠さない科学者もいる。
前編『エーザイの認知症薬「レカネマブ」、世界の学者たちが「ほとんど効かないのでは?」と疑問視する理由』に続き、薬の効果、価格……彼らが抱く「懸念」に迫る。
前提とする「仮説」に疑問符
レカネマブの薬効がこの程度の水準であることは、学習院大学教授で、神経生物学が専門の高島明彦氏にとって納得のいくものだったという。それは、この薬が前提としている「仮説」と関わっている。
「レカネマブは、『アミロイドβ(以下、Aβ)』というたんぱく質を取り除く作用をもっています。つまりこの薬は、Aβがアルツハイマー病の強力な原因であるとする仮説(Aβ仮説)を前提としているのです。
たしかに、Aβがなんらかのかたちでアルツハイマー病に関わる点については、多くの研究者が納得している。しかし、Aβが原因であるという仮説は、十分実証されているとは言えません。
臨床試験の27%という数字は、Aβを取り除いたとして、症状の進行を遅らせることはできても、止められはしないことを示した、つまり、Aβ仮説の限界を示したとも言えます」
レカネマブへの疑問を提起するピッツバーグ大のカール・ヘラップ氏も言う。
「最近、Aβ仮説について改めて深く調べましたが、この仮説は論理的に筋が通らないという結論に達しました。魅力的な仮説ですが、データと仮説が合致しない。にもかかわらず、この仮説は注目を集めてきた。そこには、Aβの研究に国の助成金が多く費やされたことや、製薬会社の利益も関わっていると考えられます」
年間800万円のコストがのしかかる
専門家たちの不安は「薬の効果」に関するものだけではない。もう一つのポイントが「費用」の問題である。
「アメリカでは、レカネマブに年間2万6500ドル(約420万円)の費用がかかるとされます。事前検査なども含めると年間5万ドル(約800万円)ほどのコストです。この薬はメディケア(アメリカの公的医療保険制度)の対象になっており、数十億ドルがメディケアの負担になるという試算もあります」(ヘラップ氏)
日本でもレカネマブは保険適用となっている。いうまでもなく、社会保障の財政が圧迫される可能性も高くなる。
前出の高島氏は、「同じコストをかけるのであれば、食生活の改善や運動といった、長期的な予防にかけるほうが効率的」と言う。
レカネマブを開発したエーザイは、これらの指摘をどう考えるのか。
同社PR部は、「弊社としては、レカネマブによる治療は十分に効果があるものと考えております」と回答。2~3年進行を遅らせることは生活の質を改善するとしたうえで、当事者が自立して生活する能力を介護者が評価する指標においては、37%の改善効果が認められているとも言う。
Aβ仮説については、「遺伝学的な証拠から間違いないと考えています」とした。(いずれも’23年9月取材時点での回答)
科学者たちのあいだで見解は激しく衝突しているが、すでに賽は投げられた。
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