免疫から腸の働きまですべてを牛耳る「粘液」。その粘液を破壊するのが、プロトンポンプ阻害薬や解熱鎮痛剤や抗生物質だと知る

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日本人の薬漬け 医学

免疫から腸の働きまですべてを牛耳る「粘液」。その粘液を破壊するのが、プロトンポンプ阻害薬や解熱鎮痛剤や抗生物質だと知る

ヒトを病気にするために開発される薬の数々

粘液を破壊するものたち

米エポックタイムズの「健康」のコーナーをよく見るのですが、先日、ハーバード大学の医学生による「 30日間で卵を 720個食べた個人実験」という記事が掲載されていて、大変興味深く読んでいました。その記事そのものは、一部を以下に訳しています。

 
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米国の医学部学生が「30日間に720個の卵を食べる」という個人実験を行った後、悪玉コレステロール値が大幅に低下
BDW 2024年10月13日

1日平均 24個の卵を 1カ月食べ続けるという過激な実験ですが、結果として、「いわゆる悪玉コレステロールが大幅に低下した」ことが見出されたものでした。

この話はともかく、この記事を読んでいましたら、リンクのところに、「粘液:病気と闘う味方を理解する」という記事がありました。「そりゃまあ、粘液は大事だろうなあ」とは漠然とは考えることもありましたが、人間の粘液が、腸の働きなどに重要な役割を持っていると共に「ウイルスなどへの感染」にも重要な働きを持つことを知りました。

粘液というのは、いわゆる「ムチン」と呼ばれる物質で、たとえば、ウナギのヌルヌルとか、ああいうのもムチンですが、Wikipedia によると、以下のようになっているようです。

動物の分泌する粘液にはほぼ全てムチンが含まれており、口腔、胃、腸をはじめとする消化器官や鼻腔、腟、関節液、目の表面の粘膜は、すべてムチンに覆われているといえる。ムチンは杯細胞から分泌され、粘膜表面を物理的に外的刺激から保護している。

wikipedia.org

まあ、このムチンの身体に対しての役割については、今回ご紹介するエポックタイムズの記事をお読みいただきたいと思いますが、

「その粘液を分解してしまうもの」

として、その中に以下が挙げられていたのですね。

粘液を分解するもの

・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
・抗生物質

それぞれ論文がリンクされているのですが、論文のタイトルだけで、何が起きるのかがわかるものです。プロトンポンプ阻害薬に関しての論文のタイトルは、

「プロトンポンプ阻害薬に関連する胃粘膜の変化」

で、非ステロイド性抗炎症薬の論文は、

「NSAIDは腸管上皮細胞のマクロオートファジーを抑制することで腸管恒常性を乱す」

というタイトルでした。

抗生物質は、

「抗生物質は微生物叢とは無関係に結腸粘液バリアを損傷する」

というタイトルの論文でした。

このそれぞれの薬剤に関しては、ずいぶん以前から書くことのあるものたちですが、逆にいえば、「私自身がかつて処方されていた薬剤たち」でもあります。

プロトンポンプ阻害薬というのは、胃酸を強力に抑制する胃薬で、H2ブロッカーと並んで胃潰瘍や逆流性食道炎に幅広く処方されている胃薬です。

 

しかし、プロトンポンプ阻害薬は、「胃ガンのリスクを最大で 8倍にまで上昇させる可能性」があることが研究でわかっています。2019年のこちらの記事で論文の内容をご紹介しています。

今回の「粘液」の話を読みまして、プロトンポンプ阻害薬は粘液を破壊する作用があることを知り、つまり、粘液の保護が消えちゃうわけですので、「そりゃ、いろいろな胃の不調につながるよなあ」と改めて思いました(過去に何度も経験しています)。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)というのは、処方も市販も含めて、ほとんどすべての解熱鎮痛剤がこれに当たります。

わりと一般的な解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン(カロナール)は、非ステロイド性抗炎症薬ではないですが、こちらもいろいろと問題があるものです。

(記事)アセトアミノフェン(日本名:カロナール)の妊婦さんと乳幼児の服用は「子どもの自閉症や神経発達の問題の原因になる」エビデンスが示された論文が発表される
In Deep 2022年8月1日

コロナの時もそうでしたけれど、インフルエンザなどでも、かなり安易に子どもにアセトアミノフェンが処方されますが、それなりにリスクもあるということを以下で書いています。というより、「熱を無理矢理下げること自体に意味がない」ということです。

(記事)子どもがみんな解熱剤でやられてしまう
In Deep 2022年8月27日

子どもには、40℃以下で解熱剤を使うべきではない根拠などについて書いています。

そして、抗生物質。

これについては難しい話ではあるのです。というのも、「抗生物質を使用しなければ助からない症状や負傷が確かに存在する」からです。

しかし、問題は「安易に処方されすぎている」ことにあります。

抗生物質が腸内細菌を破壊することは、以前からわかっていますが、特に小さな子どもへの使用では、「幼少時の抗生物質の使用は若年時の精神疾患と強く関係する」ことがわかっています。こちらの記事にデンマークの研究を載せています。

今回知りました論文では、抗生物質が腸内細菌などを殺すだけではなく、「微生物叢とは無関係に粘液バリアを損傷する」とあり、腸内細菌叢も粘液も、「どちらも破壊する」力を持っているようです。

結局、先ほど挙げました以下の薬は、「できるだけ服用しない」あるいは、「服用しても長期の連用にならないようにする」ことは重要なのかなと思います。

・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
・抗生物質

これから冬になり、また何らかの感染症が大流行する可能性もなくはないとは思いますけれど、粘液というのは、そういうもののバリアとしても働いてくれるようです。

では、エポックタイムズの記事をご紹介させていただきます。


 


粘液:病気と闘う味方を理解する

Mucus: Understanding Your Ally in Battling Illness
Epoch Times 2024/10/12

ライフスタイルの選択は、私たちの体がムチンをどれだけうまく生成するかに影響を与え、病気や疾患のリスクを低下させる。

腰の高さまでゲルが詰め込まれた 150個のフットボール競技場を横切ってエンドゾーンに到達し、タッチダウンを決めることを想像してみてほしい。

これは、ウイルスが人間に感染するために克服しなければならない防御を説明するために、消化器専門医のロビン・チュトカン博士が使用する例えだ。ゲルは腸と肺の粘液層を表しており、ウイルスの直径の 5,000倍であると彼女は述べた。

「それは非常に大きな緩衝地帯です」と、消化器系健康に関する著書を数冊執筆しているチュトカン博士は語る。同氏は著書「抗ウイルス腸」の中で粘液について詳細に書いている。

私たちは、病気になったり、鼻水や後鼻漏などの上気道症状を引き起こすアレルギーに悩まされたりしない限り、粘液について深く考えることはない。しかし、粘膜は皮膚を覆うよりも多く、肺、目、さらには消化管全体を覆っている。

実際、粘液は消化管の壁で起こる生化学的共同作業において重要な役割を果たしている。したがって、炎症性腸疾患(IBD)や自己免疫疾患に関して研究すべき、私たちの体の重要な特徴だ。

私たちの免疫の直接の盾として、粘液は保護力が非常に高いと同時に非常に脆弱でもあり、私たちがどのように食べるか、あるいは何を摂取するかによって粘液が私たちのためにどれだけうまく戦うかが決まる。

テキサス州のプラーナ機能統合医学所の内科医兼機能統合医である マニーシャ・ゲイ

 医師は、粘液について次のように説明している。

「粘液を要塞のようなものだと考えてください。粘液はまさに、体の防御の最前線なのです」

おそらくその最大の価値は、私たちが摂取するものが「粘膜バリアのすぐ下にある免疫システムの最大部分」を破壊したり過剰に活性化したりしないようにすることだと彼女は言う。

 

粘液の多くの役割

カタツムリが分泌する粘液によってカタツムリが表面を滑るのと同じように、消化管内の粘液は潤滑剤として機能し、便が消化管内をスムーズに移動するのを助ける。

粘液は、腸上皮に水分を補給して蠕動運動(消化管を通って食物を移動させる収縮波)を補助することでこれを実現する。また、恒常性を維持するために、粘液は水、栄養素、ガスの分子が粘液を通過することも可能にする必要がある。

粘液が関与するシステムは消化だけではない。粘液には他にも多くの役割があり、そのほとんどは免疫に関連している。

 

腸のバリア

粘液は、ムチンと水でできた粘着性のある滑りやすい膜で、内臓を外界から守る物理的なバリアを形成している。ムチンは、腸上皮の杯細胞によって絶えず生成され、分泌されるタンパク質だ。

粘膜層がなければ、病原菌が「細胞一つ分の厚さ」の腸壁にぶつかる可能性があるとチュトカン博士は言う。

粘液には免疫に関連する 2つの重要な役割があると彼女は述べた。まず、粘液はウイルスや細菌などの病原体に対する機械的な緩衝材だ。粘液の厚みと粘度によって、粘液が病原体を捕らえて消化管から排出する能力が調整される。第二に、免疫システムと通信して病原体を殺したり無効にしたりするタンパク質を化学的に活性化する。

 

粘液の喪失

粘液の分解には、不健康な食生活(論文)、食品添加物、プロトンポンプ阻害薬(論文)、非ステロイド性抗炎症薬(論文)、抗生物質などの薬剤など(論文)、さまざまな要因が影響する可能性がある。

「粘膜層を侵食するこれらの物質のおかげで、私たちは消化器専門医として生き残ることができるのです」とチュトカン博士は言う。「その障壁を取り除けば、免疫が活性化するのです」

医学誌 Gut に掲載された研究によると、ムチンのないマウスでは、結腸内の細菌が上皮細胞に侵入できることがわかった。その結果、炎症、下痢、直腸および結腸の脱出、直腸出血、自然発生的な大腸炎(腸の潰瘍)、および大腸がんのリスク増加が起こった(論文)。

粘液バリアの変化は、IBD(潰瘍性大腸炎やクローン病)の発症に関係している。粘液の変化は、他の自己免疫疾患にも関係している。

粘膜の変化により、通常は密着している上皮の結合が破壊され、腸の透過性が高まり、微生物が本来いるべきではない体内に侵入して、持続的な炎症を引き起こすようになる。この症状は「腸漏れ症候群 (リーキーガット)」と呼ばれることがよくある。

消化酵素、細菌、食物粒子、有毒物質など、粘液をすり抜けて免疫系を刺激するものはすべて自己免疫反応を引き起こし、体が自分自身を攻撃し始める原因になる可能性があるとゲイ

 医師は述べている。

「健康には、しっかりとした健康な粘膜バリアが非常に重要です。それが何らかの理由で崩れ始めると、体内で病気が発生し始めるのです」と彼女は語った。

 

粘液には微生物が必要

粘液バリアをサポートする方法の 1つは、腸内微生物叢だ。腸内微生物叢とは、病原体から私たちを守るために消化管に沿って生息する細菌、ウイルス、真菌、古細菌の集合体だ。微生物叢はムチンの生成に関与している。

杯細胞がムチンを生成するには、腸内細菌が食物繊維を代謝する際に生成される短鎖脂肪酸(SCFA)が必要だ。

腸内細菌叢は食物を短鎖脂肪酸に変換する役割を担っているため、腸内細菌叢の異常、つまり腸内微生物組成の不健康なバランスはバリア機能障害を引き起こす可能性がある。

短鎖脂肪酸の生産が減少すると、粘液層が薄くなり、浸透しやすくなる。IBD 、セリアック病、食物アレルギー、肥満、自己免疫疾患などの全身性疾患は、粘膜バリア機能不全に関連している (論文)。

医学誌 Gut の記事には、「腸粘液層のターンオーバーには、粘液の合成、分泌、分解が含まれており、粘液が最適な保護機能を維持できるように調整およびバランスをとる必要がある繊細なプロセスだ」とある。

 

食事と粘液

論文によると、加工が最小限に抑えられた穀物や植物由来の食物繊維を少なくとも 15%含む食事は、健康な粘膜バリアの役割を果たし、食物繊維はムチンの生成を増やすための有用な戦略になり得る。

研究によると、脂肪と炭水化物が主で食物繊維がほとんど含まれない「西洋式の食事」を 3日間続けた後、粘膜層の浸透性が増したと記事は指摘している。IBD は食物繊維が不足した食事と関連している。

植物を多く含む食事は、腸漏れ​​症候群を防ぐ、より多様な微生物叢と関連している。

「植物性食品をもっと食べましょう。内膜を作るのに役立ちます」とゲイ

 医師は言う。「肉を食べてはいけないと言っているのではありません。お皿の半分以上を植物性食品にして、バラエティ豊かにしましょう。できるだけいろいろなものを食べるのが理想です」

医学誌 Gut の記事では、粘液の成長を回復させるビフィズス菌ロンガムや、粘膜層の厚さを増やす役割を果たすリモシラクトバチルス・ロイテリなど、特定のプロバイオティクスがムチンの生成に良い影響を与えるようだと指摘されている。

ゲイ医師は、超加工食品、ソーダ、アルコールなど、化学物質をベースとしたものをすべて排除すれば、間違いなく粘膜バリアがより健康になるだろうと述べた。

チュトカン博士は、制酸剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、咳止め薬、抗生物質など、腸の健康に害を及ぼす可能性のある薬の使用を制限することも重要だと述べている。

最近のマウスの研究では、抗生物質は健康な腸のバリアの役割を果たす健康な微生物を殺すだけでなく、腸の粘膜層にも直接ダメージを与えることが発見された。

「こうしたことは壊滅的です。そして、問題の一部には、『みんなこれらの薬を飲んでいる。みんな制酸剤を飲んでいる。みんな非ステロイド性抗炎症薬を飲んでいる』という連鎖的な承認があると思われます。そして、よく考えてみると、そうですね、みんな病気なんですよ」とチュトカン博士は語った。

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