睡眠の専門家が推奨する「スマホ離し」の3ステップ
※本稿は、角谷リョウ『超熟睡トレーニング』(Gakken)の一部を再編集したものです。
■目覚ましは時計に任せて、スマホは遠くへ
スマホを枕元から離すと、かなり眠りやすくなります。
おそらくスマホを目覚まし代わりに使うために、枕元に置いている人が多いと思いますが、手元に置いておくとつい寝る前にも見てしまいますよね。
さらに、中途覚醒や早期覚醒をしたときにも時間確認のためにスマホを見てしまうと、覚醒するというループに入ってしまうんです。
人間はスマホが近くにあるとつい触ってしまいます。だから、スマホをすぐ見られる場所に置かないことが大切です。
目覚ましには、目覚まし時計を買って使うようにし、スマホは少なくとも頭から30cm以上離したところに置くようにしましょう。
■スマホから出る電磁波に潜むリスク
これには健康上の理由もあります。世界保健機関(WHO)が、スマホから出ている電磁波は「発がん性の可能性がある」と、5段階ある発がん性の上から3番目に分類しているくらいです。
iPhoneの取り扱い説明書にも「枕元に充電した状態で置かないでください」と書いてあったこともあるようです。
寝ているときはリラックスしているので、特に電磁波の影響を受けやすいとも言われています。起きているときにスマホが近くにある分には、ほぼ影響はないだろうと言われていますが、睡眠中は避けるに越したことはないでしょう。
■まずは頭から30cm離して置いてみる
前述の理由からスマホは寝室に持ち込まず、充電は寝室の外でするのがベスト。
「明日の天気どうなるんだろう?」とか「あれはどういう意味だっけ?」など、ちょっと調べたいことがあるとき、スマホがそばにあるととても便利です。
その便利さをさておいても、私は夜にスマホを見る理由なんて1つもないと思っています。気になるのなら翌朝、起きてから見ればいいのです。
でも現実的には、なかなか一足飛びに、「スマホを寝室に持ち込まない」までたどり着くのは難しいでしょう。
そこで3ステップくらいで、枕元から離していくトレーニングをすることをおすすめします。
ステップ1は、枕元から離すこと。頭から30cmくらい離れたところに置くようにしましょう。もし30cm離れた場所に適当な置き場(サイドテーブルなど)がないのであれば、床に置いてもかまいません。
ステップ2はさらに体から離して、部屋の隅に置くようにします。最初はちょっと不便に感じるかもしれませんが、なければないで何とかなるものです。
それがわかった時点でステップ3。スマホを夜、寝室に持ち込まず、充電はリビングなどで済ませるようにしましょう。
■1回でもトイレに起きると「夜間頻尿」
比較的スムーズに入眠できても、途中で何度か目が覚めてしまう「中途覚醒」や、早く目が覚めてしまう「早期覚醒」に悩まされている人が一定数います。
中途覚醒の原因で最も多いのは、夜中に尿意を感じて起きてしまうことです(早朝覚醒も原因と対策は共通することが多いので、以下でも「中途覚醒」と書いてあれば、早朝覚醒をする方も関係があると思ってお読みください)。
健康であれば本来、膀胱が朝まで尿を溜めておくことができるのですが、年齢とともに膀胱の弾力性が失われ、溜められるはずの尿を溜め切れずに尿意を感じてしまうことによります。1回でもトイレで起きる現象を「夜間頻尿」と呼びます。
■年齢が上がるほど、割合も回数も増える
ちょっと恥ずかしくてあまり人には言えないかもしれませんが、何も恥じる必要はありません。男女ともに50代以上だと半数以上、40代でも3割くらいの人が経験している、実にありがちな現象なのですから(図表1)。
トイレに行きたくなる「夜間頻尿」はあって当たり前、なければラッキーと言えるくらいに考えていただくといいでしょう。
とはいえ、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というようなものではなく、できるならば解消したいものですよね。
せっかく気持ちよく寝ていたのに、「あ、トイレ行かなきゃ」と目が覚めるなんて、すごく損した気持ちになります。それでも再びベッドにもぐりこんだあとすぐに眠れればいいですが、寝付けなくて悶々(もんもん)としてしまうと、睡眠不足になってしまいます。
■「寝る前にコップ1杯」は明らかに多すぎ
夜間頻尿対策の1番目は、水分対策です。
なぜ尿意をもよおすのかと言うと、布団の上で「おもらし」をするわけにはいかないので、膀胱から脳に「起きなさい」と指令が行くからです。
まずは寝る前の水分補給には慎重になってください。「寝る前にコップ1杯(約200ml)の水を飲む」と推奨されていますが、これは明らかに多すぎと思われます。それが夜間頻尿の原因になってしまっているのです。
もう1つ最近よくあるのが、夜寝る前にプロテインを飲むこと。筋肉を鍛えたい人が寝る前にプロテインを飲むと、筋肉作りに役立つというのが、一昔前のトレーニング理論にありました。
実は今は夜寝る前ではなく、「トレーニング前後に飲みましょう」ということになっているのですが、昔のトレンドを引きずっている人がいるのです。
当然のことながら、寝る前にプロテインを飲むとなると、それなりの水分を摂ることになってしまいますよね。
もしもあなたが寝る前にプロテインを飲んでいるのであれば、その習慣を見直しましょう。飲むのを寝る1時間以上前にして、就寝前に水分を排出するようにしてください。
■「もう眠れない…」を引き起こす2大ミス
途中で目が覚めたときいちばんよくないのが、スマホをいじること。スマホのブルーライトを浴びると、せっかく副交感神経が優位に立って「お休みモード」に入っていたのが、一気に交感神経が優位になってしまいます。だからスマホは絶対に見ないことが大事です。
次に気をつけてほしいのが、トイレに立つときに煌々と電気をつけてしまうことです。明るさで覚醒してしまいます。
対策としては天井の照明をつけずに済むよう、足元灯を入手して、夜寝る前につけるようにするといいでしょう。ほのかな灯りのつく手で持って歩けるランタンのようなものもおすすめです。
要はトイレまで何かにつっかかったりぶつかったりすることなく、無事に行き着ければいいわけですよね。ですからパーッと室内や廊下を全部明るくしてしまうのではなく、最小限危険物を避けられる程度の照明器具を用意するといいでしょう。
このことを知り合いに話したことがあります。早速試してみたら、それまで一度トイレに立つとなかなか寝付けなかったのが、5秒で眠れるようになったそうです。
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角谷 リョウ(すみや・りょう)
スリープコーチ
上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会会員、日本認知療法・認知行動療法学会会員、日本サウナ学会員。ライフリー株式会社を立ち上げ、NTTドコモ、サイバーエージェントなどの法人を中心に、14万人の睡眠改善をサポートしてきた実績をもつ。短期間かつ高確率(受講者の90%以上)で効果を感じられる実践法を得意とする。最近の趣味は瞑想。瞑想でアルコール依存症を克服し、月2回・適量飲酒にまで改善した。
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(スリープコーチ 角谷 リョウ)
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