アメリカで観測史上最悪の「突発的な干ばつ」が進行中

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米国の干ばつが拡大中 世界の出来事

アメリカで観測史上最悪の「突発的な干ばつ」が進行中

異常な乾燥と干ばつの影響がアメリカ人口の 78%以上に及んだ。

アメリカのほぼ全土(48州)で、この秋から深刻な干ばつが異常に早いペースで進行していることを NASA が伝えていました。

通常、干ばつは、数か月あるいは数年かけて徐々に進行するものですが、今起きている干ばつは、数週間から数か月で急速に悪化するタイプのもので、「突発的な干ばつ (flash drought )」と呼ばれるものだそうです。

冒頭のマップの色分けは次のようになっています。

 

NOAA (アメリカ海洋大気庁)の干ばつサイトによると、以下のような状態となっているようです。

・米国 48州の 54.08%が干ばつに見舞われている。

・3億1,860万エーカーの主要作物農地が干ばつ状態に陥っている。

・米国 48州で 1億4,980万人が干ばつの影響を受けている。

drought.gov


雨不足は相当なもののようで、NASA の報告には、たとえば、ハリケーン・ヘレンで深刻な集中豪雨に見舞われたアメリカ南東部でも、

「その後、まったく雨が降らず、あっという間に干ばつになった」

と記されています。

端的にいえば、この異常に早いペースで進行している干ばつの原因は 10月に「気温が通常より異常に高かった」ことと、「降雨量が異常に少なかった」ことによるものです。

この原因について、NASA は気候変動という言葉を使っていますが、現在の世界的な高温の原因は、2022年にトンガ沖で起きた海底火山フンガ・トンガ=フンガ・ハーパイの噴火によるものであることが、最近明白になっています。

まあしかし、原因は何であれ、このような状態が続くのは食糧安全保障の問題からはあまりいいことではないようです。

アメリカでは、冬小麦という「秋に種を撒いて、冬を越し、春や初夏に収穫する」という小麦生産も多くの場所で行われていまして、冬の極端な干ばつは、冬小麦の生産に悪影響を与えます。

今後のアメリカと、他の地域を含めた気温や気象の推移は今のところは明確ではありませんが、世界的に、食糧生産があまり良い状態ではなくなっている感じを受けます。

冒頭の NASA の報告をご紹介します。



米国全土で干ばつが拡大

Drought Expands Across the U.S.
NASA earth observatory 2024/10/29

2024年10月、異常な乾燥状態がアメリカ本土の半分以上を覆った。

10月29日には、異常な乾燥と干ばつの影響がアメリカ人口の 78%以上に及んだ。これはアメリカ干ばつ監視局の 25年間の記録の中で最も高い割合だ。

10月の大部分は、大気圏上層部に数週間にわたって停滞した強い高気圧の影響で、例年より乾燥して暖かい天候が続いた。南東部地域気候センターによると、フィラデルフィア、アトランタ、バーミンガム、ダラス、ラスベガス、サクラメントの各都市を含む全米 100か所の気象観測所で 10月は雨が降らなかったと記録されている。

70か所を超える気象観測所で、観測史上最も乾燥した 10月が記録された。

上の干ばつマップは(冒頭のマップ)、米国農務省、NOAA、ネブラスカ大学リンカーン校のパートナーシップであるアメリカ干ばつモニターが報告した 2024年10月29日の米国本土の状況を示している。

マップでは、干ばつの激しさを黄色から赤への段階的な色合いで表している。このマップは、全国の 350を超える連邦、州、および地方の観測者による気候、土壌、作物、および水の状態の測定値の分析に基づいている。NASAは、干ばつ監視活動を支援するいくつかの測定値とモデルを提供している。

干ばつは、6月には全米国土のわずか 12%を覆っていたに過ぎなかったが、10月29日の時点では、干ばつ地域は 54%にまで拡大した

この急速な拡大により、NOAA が「突発的干ばつ」と呼ぶ現象が米国国内の多くの地域で発生した。突発的干ばつは通常、異常な高温、風、または放射線を伴う、通常より降水量が少ないことによって引き起こされる。

アラバマ大学の

 科学者ケイリー・シュワルツ氏は以下のように述べる。

「干ばつは通常、数か月から数年かけてゆっくりと進行しますが、突発的な干ばつは数週間から数か月で急速に悪化します」

国立干ばつ緩和センターがあるネブラスカ州では、10月は雨が少なく、気温が平年より高かったと指摘した。同州の大部分は 10月下旬に深刻な干ばつに見舞われた(地図ではオレンジ色で表示)。

10月23日から 29日の週は、ほぼ全米で平年より気温が高く、アラスカ州とケンタッキー州を除くすべての州で干ばつが発生した。最も気温が高かったのはハイプレーンズ(米国西部から中西部)と南部で、気温は平年より摂氏 6℃から 7℃ 高かった

ハリケーン・ヘレンが 9月下旬にかなりの降雨量をもたらした南東部でも、多くの場所が急速に乾燥し、ハリケーン以来降雨量がゼロを記録した場所もあった

「この秋は、米国各地で突発的な干ばつの典型的な例となりました」とウィスコンシン大学マディソン校の気象学者ジェイソン・オトキン氏は言う。

「こうした現象は人々を驚かせます。なぜなら、干ばつがまったく起こってない状態から、あっという間に深刻な干ばつ状態に変わる可能性があるからです」

オトキン氏はサイエンス誌に発表した研究論文の共著者で、1950年代以降、気候変動により干ばつが急速に激化していることが明らかになった。研究チームによると、突発的な干ばつは世界の多くの地域でより一般的になり、干ばつの監視と予測が困難になっているという。

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