103万円の壁問題は「178万円玉木案」こそ正当だ…!

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12月11日、103万円の壁引き上げに3党合意。あとは金額 税金

103万円の壁問題は「178万円玉木案」こそ正当だ…!

「それ未満の自民党案が財務省的な緊縮思想に基づく「屁理屈」といえるワケ」by 藤井聡

「物価水準」で決める案は不当だ

今、俄然話題になっている、玉木氏率いる国民民主党が主張している、年収の壁103万円を「178万円」に引き上げる案。

この178万円という数字の根拠は、玉木氏曰く、「103万円の壁が作られた30年前の最低賃金に比べて今の最低賃金は73%増になっている。だから103万円の壁は、73%増の178万円にすべきだ」というもの。

 

これに対して、自民党からは「30年前に物価上昇率は、17%だ。だから、103万円の壁も17%増の120万円が妥当だ」という声が聞こえてきています。(産経新聞、12月3日「『120万円が妥当』自民・茂木敏充氏 『103万円の壁』引き上げに『財源苦労する』」)

一見この、最低賃金でなく物価水準の上昇率を基準に壁の高さを決める自民党案も、合理性があるように見えます。

12月11日、103万円の壁引き上げに3党合意。あとは金額 by Gettyimages

「30年前の103万円という所得の実質値」は、「物価が17%伸びた現在の120万円という所得の実質値」と同じだ、ということは言うことができます(これは実質賃金、実質GDP等の定義で言うところの「実質」という言葉を使うのなら、という主旨です)。

しかしそれでもなお、年収の壁は、「最低賃金の伸び率73%」で、今日の水準を決めることが必要であり、物価水準で決める案は「不当」な案だと、断ずることができまるのです。

以下、その理由を順をおって説明いたしましょう。

103万円の基準は最低賃金

そもそも30年前に103万円という水準が決められた時に(直接的に)使われた数字が、物価水準ではなく「最低賃金」だったのです。

30年前の最低賃金は611円でした。

で、その611円で、平均的な時間働けば、年収はちょうど103万円となるのです。

  最低日給 611円×7時間=4277円(9~17時まで1時間昼休みで働くと7時間)
  最低月給 4277円×20日=85540円
  最低年収 85540円×12ヶ月=約103万円

これはつまり、「最低賃金ちょうどで働く労働者(あるいは、最低賃金以下で働く労働者)からは、税金を徴集することを避けよう」という考え方に基づいて、103万円の壁が決定されたことを意味しています。

ところで最低賃金とは、

「労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与する」

と法律(最低賃金法)で定められています。

つまり、「人々が健康で文化的な生活を営むためには、賃金は法で定める最低賃金以上でなければならず、それ以下の賃金で働かされてしまうような人々は、健康で文化的な生活ができなくなる」というわけです(しかも、「労働力の質を確保するためにも、不当な競争を回避するためにも、賃金は最低賃金以上なければならない」とも謳われています)。

そして、103万円とは、30年前の最低賃金611円に基づいて計算されているということは、つまり、

「毎日9時から17時まで、週に5日働くという一般的な動労時間の人間が、健康で文化的な生活を営むためには、最低でも103万円程度の年収がなければならない。だから、その最低限の年収をあげている人から、税金をとってしまうと、健康で文化的な生活を営むことができなくなる」

という考え方に基づいて、103万円の壁が設定されているという事になるわけです。

健康で文化的な生活を営むために今必要なこと

そして、その最低賃金が今、30年前に比べて73%も高い1055円になっているのです。このことはつまり、「今日において健康で文化的な生活を営むためには、30年前に比べて73%高い賃金がなければならないのであり、それ以下の賃金なら、人々は健康で文化的な生活ができなくなる」と、政府が定義していることを意味します。

確かに、30年前に比べて物価は17%しか上がっていないのでしょうが、30年前に比べて、今日の方が、それよりももっと高い、73%増という水準の賃金がなければ、健康で物価的な生活が出来なくなっている、と政府は定義しているわけです。

もちろん、人々が健康で文化的な生活を行うために最低限必要な消費や投資の「中身」が全く同じなら、最低賃金もまた、物価上昇率である17%だけアップするだけでこと足りたでしょう。しかし、 30年前に比べて今は、最低限必要な消費や投資の「中身」そのものが変わっているのであり、物価上昇率の17%アップだけでは、健康で文化的な暮らしが出来なくなっている―――と政府は認定しているのです。

だから、そもそも「103万円という年収の壁」は「健康で文化的な生活をするために必要な最低限の年収」なのであり、そしてそれを定義する最低賃金が73%もアップしている以上、年収の壁も73%アップさせた178万円にしなければ、法的理念からして不整合な矛盾が生じてしまうのです!

もし、それでもなお、年収の壁は物価上昇率の17%アップだけでよいと政府が強弁するのなら、最低賃金も今日の1055円という水準から、30年前から17%だけアップさせた「715円」という水準にまで大幅に引き下げる必要が生ずるでしょう。

こう考えると、今、自民党から出されている、物価上昇率の17%アップの120万円に引き上げるだけで十分だという説は、理論的な整合性を無視し、ただ単に財務省的な「緊縮」思想に基づき、ただただ減税額を圧縮したいという動機だけでひねり出された屁理屈に過ぎないという<実態>が見えてきます。

自民党公明党が、財務省が何を言おうが、以上に述べたような正当な論理に基づいて正々堂々と178万円にまで103万円の壁を引き上げる玉木案に賛同されんことを、心から祈念したいと思います。

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