高齢者の「消費激減」が日本に与える「大きすぎる影響」

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パンデミックブルー 社会問題

高齢者の「消費激減」が日本に与える「大きすぎる影響」

人口減少とインフレによる高齢者の消費激減がもたらすもの

人口減少日本で何が起こるのか――。多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。

(※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです)

主な消費世代の3人に1人が高齢者

高齢者の消費マインドの冷え込みが続くとなると、どうなるのか。

高齢者の人口ボリュームは大きく、個々の冷え込みが積み上がると大きな額となる。総務省の人口推計によれば、2020年時点の高齢者数は3607万人を超え、高齢化率は世界最高の28.7%だ。分母を20歳以上として計算し直すと34.4%になる。

大雑把に言えば、主な消費世代の3人に1人が高齢者なのである。

高齢者の消費支出が、仮に平均10%落ち込み続けるだけで、国内マーケットが360万人縮むのと同じである。平均20%の落ち込みならば、720万人減に匹敵する。同日現在、消費の牽引役である勤労世代(20~64歳)は6897万人なので1割以上にあたる。決して無視できない数だ。

2042年まで日本の高齢者数は増え続け、国内マーケットにおける高齢者の「存在感」は年々大きくなっていく。

総人口の減少に伴って国内マーケットが縮小していくことは、「コロナ前」からの日本経済の大きな課題であった。しかも、それは単に規模が小さくなるだけでは済まない課題だ。消費者が高齢化することによって1人当たりの消費量も減るため、消費者の人数が減る以上のスピードでマーケットは縮んでいく。いわば、「ダブルの縮小」である。

これだけでも対応は難しいのに、高齢者の消費の冷え込みまで加わったならば、国内マーケットにとってはトリプルパンチとなる。

高齢者の消費マインドの冷え込みが、新型コロナウイルス感染症が落ち着きをみせてからも続く要因は、年金受給額の減少や負担増などへの懸念だけではない。21世紀は「感染症の世紀」となりそうなのだ。むしろ、こちらのほうが影響は大きいかもしれない。

どんなに大流行した感染症もいつか収束の日を迎える。このことは歴史が証明しており、新型コロナウイルス感染症も例外ではないだろう。だが、感染症を地球上から撲滅することは難しい。新型コロナウイルスでもそうだが、ウイルスは感染が拡大する中で頻繁に変異を繰り返す。いったん下火になったとしても、再び局所的な感染の広がりが予想される。かなり長い年月を、この厄介なウイルスと共存していかざるを得ないのだ。

仮に、新型コロナウイルスの完全撲滅が実現したとしても、安心はできない。次なる感染症が繰り返しやってくる。なぜ21世紀が「感染症の世紀」になりそうかと言えば、地球規模で人口増加が続いているからだ。

世界各国で都市化が進み、これまで人を寄せ付けなかった密林地域などが猛スピードで開発されている。温暖化で、永久凍土も溶解している。こうした地域に人が立ち入るようになったことで、これまで人類とほとんど接触することのなかった未知のウイルスとの接触機会が格段に増えているのである。グローバル化により人々が簡単に国境を越えて移動するようになった以上、ウイルスはあっという間に全世界に運搬される。

基礎体力が乏しく、既往症を抱える高齢者が重症化しやすいのは、多くの疾病にも共通した話である。ワクチンで集団免疫ができ、新型コロナウイルス感染症が収束すれば、いったんは警戒心が緩み、一時的に消費マインドも回復しよう。だが、数年おきに緊張感をもった暮らしを迫られることになっては、高齢者の消費マインドに火が点き、コロナ前の水準に消費支出が戻るようになるまでにかなりの時間を要するだろう。

その結果、企業の業績が低迷し若者の雇用情勢がさらに悪化すれば、結婚や妊娠・出産を先送りする人が多くなり、少子化も加速するという負のスパイラルに陥っていく。

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。

未来のドリル コロナが見せた日本の弱点 (講談社現代新書 2621)
累計90万部超『未来の年表』シリーズ第4弾!少子化はコロナ禍で18年も早まった!日本の病巣である「社会の老化」を、以下のような「人口減少ドリル」で易しく学びましょう。Q・次の空欄に当てはまる数字は?現在、主な消費世代の●人に1人が高齢者A....

日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」

2020年、女性の半数が50歳を超える。2024年、全国民の3人に1人以上が65歳以上になる。2033年、3戸に1戸が空き家になる。2040年、自治体の半数が消滅する――人口カレンダーで人口減少ニッポンの「不都合な真実」を暴いた累計100万部突破のベストセラー『未来の年表』シリーズ。

待望の最新作『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』の刊行を前に、著者の河合雅司氏が「日曜日の初耳学」に出演。大きな反響が寄せられているその内容とは?

 
100万部突破のシリーズ最新作『未来の年表 業界大変化』

2030年には百貨店も銀行も地方から消える

「日曜日の初耳学」では、林修氏の熱烈オファーにより、人口減少問題の第一人者として河合氏が登場。少子高齢化による人口減少で沈没の危機にある日本社会の未来とその解決策について語り合った。

まず、『未来の年表』では未来をどう予測しているのか――。2030年には百貨店も銀行も老人ホームも地方から消えることや、今後東京で高齢者が増えることで手術が半年待ちになることが紹介された。

「人口は予測ではない、過去に行ったことの投影なんです。だから、外れる外れないではなくて、過去を見ればわかるんです」(河合氏)

この国の出生数が100万人を切ったのが2016年のこと。それから急激なペースで減り、今年上半期の出生数は38万人となり、1年間では75万人ほどになるのではないかとも言われる。これは国の予想より11年前倒しで少子化が進行していることになる。

「ポツンと5軒家」はやめるべき

東京一極集中が進み、「地方消滅」が叫ばれている。政府は過疎地域への移住を推奨し、空き家を安く貸すなどの対応をしている。

だが、「こうした移住政策はやめるべき」だと河合氏は言う。さらには、「この先、『ポツンと5軒家』はやめるべきだ」と主張する。どういうことだろうか。

〔PHOTO〕iStock

山里に行くと90代1人暮らしの人だらけという光景が珍しくない。そこに30代の家族が移住したとする。10年後には高齢者が亡くなり、若い移住者だけが残ることになる。

「ポツンと5軒家」から「ポツンと1軒家」の状態になるのだ。すると、わざわざ1軒のために、電気やガスや水道を提供しないといけなくなり、他地域のインラフの料金もアップする。実際、2043年には水道代が1.4倍以上になるという予測も出ている。

 

地方集住」という可能性

しかし、地方移住にも希望はあると河合氏は言う。

現状の移住政策では一極集中を是正できていないが、「地方集住」という形であれば可能性があるのではないか、と。

人が住む地域と住まない地域を明確に分けることができれば、そこには民間事業を残すことができるという。最低10万人の商圏を維持できれば、そのエリアは持続可能と言われている。

番組では秋田県が例として取り上げられた。2015年には約102万人だった人口が2045年には約60万人に減少。60万人ということは10万人の商圏が6つしかない。

そうした状況となる秋田県の生き残り策は「秋田市に全部移住するか」「秋田県を秋田市と名乗るか」だという。

仙台と並ぶ100万都市にするために、多少の痛みを伴ってでも大胆な変化をしていかないとこの先の変化には対応していけない。

ショッピングモールの閉店ラッシュ

人口減少による影響は、生活に欠かせない場所にすでに現れている。

具体的には、「2030年には大型ショッピングモールは維持できなくなる」という事態が起こる。

見込んだお客さんが来ず、場所によっては閉店が始まっており、今年だけで25店が閉店しているという。想定以上に人口減少が進んでいるのだろう。

〔PHOTO〕iStock

これから何が起きるのかといえば、既存の商店街が壊滅し、ショッピングモールが閉店し、地方には何も残らない未来の到来だ。

しかし、政治(家)は解決してくれなさそうだ。人口減少は10年単位で取り組まなければいけない問題なのだが、票にならない政策は食いつきが悪いのだという。それでも、今からやれば、正しく対応すれば、豊かな日本は続けられると河合氏は語った。

 

高品質なものを高付加価値で売る

日本では2042年から本格的な人口減少が始まる。

人口を増加させることは難しいため、人口減少を前提にどうしていくのかを考えなければいけない。人口減少時代において、生産性・成長を維持していく経済モデルを作ることが大事になってくる。

「まだ日本が経済大国でいられるうちに、戦略的に縮める必要があります。これまでの産業を維持していこうと思うと、どこの分野も人材不足になってきて維持できません。日本は各分野に産業があるので、捨てるものは捨てて残すものは徹底してよくしていくべきでしょう」(河合氏)

具体的には、日本より人口が少ないドイツやフランスなどのヨーロッパ型を目指すべきだと河合氏は提言する。例として挙げるのは、自動車会社フォルクスワーゲンのポルシェというブランドだ。

ポルシェの昨年の売り上げは約28万台で約50億ユーロの営業利益があった一方、フォルクスワーゲンの売り上げは約457万台で営業利益は約25億ユーロだった。フォルクスワーゲンがポルシェと同じ利益を生み出すには、900万台近く売らねばならない。

ここから言えることは何か。

生産量も労働者も消費者も激減する日本にとって、「高品質なものを高付加価値で売る」というモデルを築き上げることが急務となるということだ。

シリーズ最新作となる『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した必読の1冊だ。



未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること (講談社現代新書)
人口減少日本で各業種・職種や公共サービスに何が起こるのか?実人数が減り消費量が落ち込む「ダブルの縮小」に見舞われるこの国は一体どうすればいいのか?瀬戸際の日本にこれから起きる大変化を詳細かつ大胆に描きつつ、「戦略的に縮む」という成長モデルの...

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