人工甘味料のアスパルテームが動脈硬化を引き起こして心臓病や脳卒中のリスクを高める可能性
アスパルテームを摂取した後のマウスの体内では、インスリンの分泌量が急上昇していた
カロリーオフ飲料やお菓子などに広く使われている人工甘味料のアスパルテームは、世界保健機関(WHO)によって「発がん性がある可能性」があると分類されるなど、健康に悪影響を及ぼすのではないかと懸念されています。新たな研究では、アスパルテームを投与されたマウスでは動脈硬化が進み、心臓病や脳卒中のリスクが高まる可能性があると示されました。
Sweetener aspartame aggravates atherosclerosis through insulin-triggered inflammation – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413125000063
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EXPERT REACTION: Common artificial sweetener can damage the hearts of mice – Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/common-artificial-sweetener-can-damage-the-hearts-of-mice
Study Reveals How This Artificial Sweetener May Cause Heart Damage : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/study-reveals-how-this-artificial-sweetener-may-cause-heart-damage
アメリカ・中国・スウェーデンなどの研究チームは、一般的な人工甘味料であるアスパルテームを0~0.15%含むエサを、12週間にわたりマウスに与える実験を行いました。これは、人間が1日約3缶のダイエットソーダを飲む場合のアスパルテーム摂取量に相当する量だとのこと。
実験の結果、アスパルテームを与えられたマウスはそうでないマウスと比較して、動脈により大きくて脂肪の多いプラーク(アテローム)を蓄積し、血管の炎症レベルが高くなったことがわかりました。
以下の画像は、左から順に「Vehicle(アスパルテーム0%)」「アスパルテーム0.05%」「アスパルテーム0.10%」「アスパルテーム0.15%」のエサを食べたマウスの動脈を並べたもので、アスパルテームの量が多いほどプラークの蓄積が多いことが報告されています。動脈にプラークが蓄積して欠陥が狭くなる状態はアテローム性動脈硬化と呼ばれ、心血管疾患の発症リスクを高めるとのこと。
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研究チームがマウスの血液を分析したところ、アスパルテームを摂取した後のマウスの体内では、インスリンの分泌量が急上昇していることがわかりました。これは、口や腸などの組織にある甘さ受容体がアスパルテームに反応し、インスリンの分泌が促されたためだと考えられます。
さらに、インスリン分泌量が上がるとより活性化する「CX3CL1」と呼ばれるシグナル分子が、インスリン分泌に伴うプラーク蓄積に関連していることもわかりました。実際にCX3CL1の受容体を除去すると、動脈内での危険なプラーク蓄積が止まったとのことです。
論文の共著者であり、スウェーデンのカロリンスカ研究所で血管関連の慢性疾患を研究するYihai Cao氏は、「動脈を通る血流は強くて丈夫であるため、心臓がポンプのように動くと、ほとんどの化学物質はすぐに洗い流されます。しかし、驚いたことにCX3CL1は違い、血管内層の表面に接着されたままでした。ここでCX3CL1はエサのように働き、通過する免疫細胞を捕らえていました」と述べています。
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なお、今回の研究はあくまでマウスを対象に行われたものであり、人間でも同様の影響が出るかどうかは確認されていません。また、今回の研究に使われたマウスは、心臓病にかかりやすい遺伝子を持つ実験用の種類であり、食事そのものも心臓病を発症しやすい高脂肪・高コレステロールのものだったとのこと。
オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学の化学者であるオリバー・ジョーンズ氏は、アスパルテームが人間において血糖値やインスリンに影響を及ぼさないことが確かめられていると指摘。「アスパルテームが心血管リスクの増加を引き起こしたとしても、そのリスクは高脂肪・高糖質な食事や運動不足などに比べ、非常に小さい可能性があります」と述べ、今回の研究はアスパルテームへの懸念を強めるものではないと主張しています。
一方でCao氏は、今回の研究結果を人間でも検証する予定だとのこと。Cao氏は、「人工甘味料はほぼすべての種類の食品に浸透しているため、長期的な健康への影響を知る必要があります」と述べました。
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