200億円で可能な高額療養費「見直し凍結」は拒否
高校無償化は5000億円かかるのに…非情政権は「女性を敵に回した」と専門家
自公と立憲の政策責任者が26日、予算案の修正協議を実施。療養費制度の見直し凍結などを盛り込んだ3兆8000億円規模の修正を突き付けた立憲に対し、自公は安定財源の確保を理由に挙げて「現行の政府案から見直しはない」と突っぱねた。
療養費制度の負担上限が引き上げられたら、がん・難病患者は治療断念に追い込まれかねない。生死に直結する問題だからこそ、まずは財源確保に奔走するべきなのに、政府は「制度の持続性」を御旗に掲げて凍結を拒否。26日の衆院予算委員会で立憲の本庄知史議員が改めて「200億円の財源で、これ(凍結)は達成可能」と指摘したが、石破首相は「財源をどこから得るのか」と聞く耳を持たなかった。
しかし、財源論は凍結しない理由にはならない。
自公は予算成立に向けた数目当てに、日本維新の会とは3党で合意。維新の看板政策である「高校授業料の無償化」をのんだ。関連経費は5000億円に上るとされるが、石破首相は財源について「行財政改革を行い安定財源を確保する」とあやふやなまま。5000億円の財源はハッキリしないのに、難病者らの生死を握る200億円に財源論を持ち出すのはダブルスタンダード、二枚舌も甚だしい。
がん関係学会が次々と緊急声明
あまりに非情な態度に、がん・難病患者の団体だけでなく、専門家集団も我慢の限界を迎えた。
「日本乳癌学会」は26日、療養費制度の負担上限引き上げに関する緊急声明を発表。乳がんが他のがんと比べ、子育て・現役世代の罹患率が高いとして、〈医療費の負担が原因で経済的困窮に陥ることは、患者本人だけでなく家族を含む生活全般に深刻な影響を及ぼすことが懸念される〉と指摘した。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)によると、2020年の女性乳がん患者は計9万1531人。うち現役世代(20~64歳)は、半数の4万6608人に上る。子育て中の人々を含むであろう、25~54歳に絞ってみても全体の約3割という高さだ。
「乳がんは今や国民病で、女性の9人に1人は罹患するといわれます。身近な病気ゆえに、負担上限引き上げがどんな影響を及ぼすか、専門家も黙っていられなくなったのでしょう。抜き差しならない状況だということです。乳がんの治療は手術だけでなく、抗がん剤や放射線など多岐にわたり、再発や転移で長期継続を要することも珍しくありません。政府は『少子化対策』や『女性活躍』をうたっていますが、その実、女性を敵に回しているように見えます」(全国保険医団体連合会事務局次長・本並省吾氏)
26日は乳癌学会だけでなく、日本胃癌学会や日本緩和医療学会、日本がんサポーティブケア学会も、引き上げの再検討などを求める緊急声明を出した。患者からも専門家からも疎まれる愚策は、やはり凍結するしかない。
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