4月20日に発動される可能性のある「反乱法」を発端として、アメリカは歴史上最大の監獄国家に陥るのか
反乱法が施行されればアメリカ国内が混乱に陥る可能性がある
2025年4月20日
米国の作家マイケル・スナイダーさんが、「左派が主張する陰謀論は、4月20日に何か大きな出来事が起こると主張している」というタイトルの記事を投稿していました。
「また何だか大げさな…」と思って読んでみましたら、「なるほど」と少し納得した次第です。
4月20日という括りの発端は、ホワイトハウスのリリース「米国南部国境における国家非常事態宣言」という大統領令にあります。リリースされたのは、トランプ大統領の就任の日である年 1月20日でしたが、この中に以下の記述があります。
2025年1月20日に布告された大統領令より
この布告の日から 90日以内に、国防長官と国土安全保障長官は、アメリカ合衆国の南部国境の状況と、1807年の反乱法を発動するかどうかを含む、南部国境の完全な運用管理を獲得するために必要となる可能性のある追加措置に関する勧告について、共同報告書を大統領に提出するものとする。
ここに「1807年の反乱法を発動するかどうか…」とありますが、反乱法とか何かというと、調べてみますと、1807年に、当時のトーマス・ジェファーソン大統領によって署名されたものだそうです。米国第三代大統領ですね。
そういえば、先日のメルマガ(4月11日号)に、ちょうどトーマス・ジェファーソン大統領のことにふれたことを思い出しましたが、この大統領の言葉である、
「私は平和な奴隷制よりも危険な自由を好む」
という言葉の意味を探求したものでしたが、まあ、今回の話とは関係ありません。
反乱法に戻りますと、今は「反乱法 252条」というようなことになっているらしいですが、以下のようなものだそうです。
反乱法252条 連邦政府の権限を執行するための民兵および武装勢力の使用
大統領は、違法な妨害、結託、集会、または合衆国の権威に対する反乱により、通常の司法手続きではいずれかの州で合衆国の法律を執行することが実行不可能であると考えるときは、いつでもそれらの法律を執行し、または反乱を鎮圧するために必要であると考える州の民兵を連邦政府に召集し、軍隊を使用することができる。
それで、「その反乱法を発動するかどうか」などについて、大統領令が出されたのが、今年 1月25日。そして、「この布告の日から 90日以内に」発動するかどうかを決めると。
1月20日の 90日後というのが、すなわち、マイケル・スナイダーさんの記事のタイトルにある今年 4月20日であるわけです。
それまでに「発動するか、しないか」を国防長官と国土安全保障長官が決めると。
これについては、懸念する人たちは以前から気にしていたようで、たとえば、サンフランシスコ・クロニクル紙は、先月 5日に、以下のような意見記事を掲載していました。
少し長いですが、事態がわかりやすいですので、ご紹介します。
記事を書いたのは、アメリカ海軍戦争大学で国家安全保障意思決定の教授を務め、戦略国際問題研究所の非常勤研究員も務めていたブレット・ワグナー氏という方です。
トランプ大統領は反乱法を発動する準備を進めているのか? その兆候は見え始めている
国防総省と国土安全保障省の合同報告書は、不法移民に対して反乱法を発動すべきかどうかをまもなく勧告する予定だ。
Is Trump preparing to invoke the Insurrection Act? Signs are pointing that way
sfchronicle.com 2025/03/05
ドナルド・トランプ大統領の最初の一連の大統領令のうち、重要にも関わらず、あまり注目されていない部分、つまり国防総省と国土安全保障省の長官に 90日以内に「反乱法を発動するかどうか」を勧告する共同報告書を提出するよう命じる部分について、期限が迫っている。
私たちの多くは今、この報告書とその内容が、鉄拳制裁を好む男(トランプ氏のこと)の下で、大統領権力が抑制されない危険な道へと私たちを導く可能性があることを知りながら、固唾を飲んで見守っている。
緊張感をさらに高めたのは、ペンタゴンで最近起きた「金曜の夜の大虐殺」である。 これは、国の最高位の制服軍人を解雇し、大統領と、権力に復帰したら戒厳令を宣言するという大統領の長年の意向の間に立ちはだかるガードレール(つまり、陸軍、海軍、空軍のトップの制服弁護士)を 排除した出来事だ。
(※ 訳者注)これは、トランプ氏が、統合参謀本部議長、海軍トップ、空軍副司令官などを解任し、「粛正」と言われた出来事です。こちらの記事などにあります。
これは偶然なのだろうか。
例えばとしてだが、トランプ氏が反乱法を発動し、戒厳令を宣言したとしよう。この場合、法律上は「反乱」を主張する必要すらない。
必要なのは、「不法な妨害」によって「合衆国法の執行が不可能になった」と主張することだけだ(アイゼンハワー大統領が、アーカンソー州リトルロックの学校で人種差別撤廃を強制執行するようアーカンソー州兵に命じたように)。
ここで、トランプ氏とその政治的同盟者が主張してきたすべての誤った主張と完全な嘘が登場する。
トランプ氏は、たとえば、 コロラド州のある都市全体がベネズエラのストリートギャングに占拠された、とか、オハイオ州のある都市はハイチ難民に侵略され、猫や犬をすべて食べている、などといった誤った主張をしている。
また、「何百万人もの」不法移民が毎週(場合によっては「毎日」)我が国に流入しているとの漠然とした主張もある。
これらの虚偽の主張や完全な嘘は、戒厳令を宣言するために、キャッチーなフレーズにまとめ上げられ、反乱法を発動するための法的根拠を確立し、存在しない不法移民を捜索するという口実で、どこでも好きな場所で戸別訪問を開始するための準備を整えることができる。
米国の領土と人口の広大さに加え、物流の複雑さにもかかわらず、戒厳令の施行は迅速に進められる可能性がある。
コロラド州のある都市を例に挙げよう。選挙までの数か月間、 トランプ氏とその支持者たちはコロラド州オーロラ市に関して大きな嘘を広め、当選したら大規模な移民取り締まりを行うと約束した。
オーロラにはすでに移民関税執行局があり、さらに軍事基地もあるが、それが「臨時」拘留センターとして使われることになった。
プロジェクト2025 (※ 2025年大統領移行プロジェクト。詳しくはこちらにあります)はさらに、キューバのグアンタナモにある米海軍基地に最大3万人の被拘禁者を継続的に収容するという、すでに進行中(ただし段階的に廃止される予定と報じられている)の トランプ氏の計画を推し進め、グアンタナモを米国の町に移転させ、国中に散らばる追加のグアンタナモを設置することを提案している。
グアンタナモの候補地として検討されていると思われる施設の一つが、ミズーリ州カンザスシティ近郊にある旧レブンワース拘置所だ。ここは、かつては我が国の営利目的の「刑務所産業複合体」の拠点だった。
近隣住民は、甚だしい人権侵害のために閉鎖されたこの施設の再開を阻止しようと、激しい抗議活動を展開している。
私は最近、この施設を視察したが、数百、いや数千と言わないまでも、不法移民の家族が、まるで通りの向こう側で草を食む牛のように、そこに押し込められているのではないかと思うと、恐怖を感じた。
もちろん、トランプ大統領が米国市民の市民権剥奪を検討している今、これらのグアンタナモ基地はいずれも米国市民の拘留に利用される可能性がある。
J・D・ヴァンス副大統領は、出生地主義の市民権剥奪に関して裁判所が大統領に不利な判決を下した場合、大統領はその命令を無視すれば良いと示唆している。
「しかし、公民的不服従はどうなのか?」と疑問に思う人もいるかもしれない。
「アメリカを一夜にして北朝鮮に変えるなんて無理だ!」と。
前回、トランプ大統領が軍に対し、アメリカの抗議活動参加者への発砲を命じた際、彼を阻止できたのは、当時の国防長官と最高司令官が命令の実行を拒否したことだけだった。
それから 4年が経ち、次期将軍に就任予定のベンチャーキャピタリスト(※ ダン・ケイン統合参謀本部議長のこと)は、保守政治行動会議(MAGA)の寵児であり、トランプ氏によれば、以前イラクで 2人が会った際、この人物は MAGA の帽子をかぶっていたという。
他に空席が空いているのは、陸軍、海軍、空軍の最高位の制服弁護士である三つ星将軍たちだ。
彼らは最高司令官と国防長官からの命令を審査し、合法性を判断する責任を負う。ピート・ヘグゼス国防長官は最近、前任の将校たちが解任された理由について疑問を抱かないよう、この措置は「最高司令官から発せられた命令」を彼らが阻止するのを防ぐための予防措置だと説明した。
トランプ氏は今回、適切な「イエスマン」を見つけることについて順調に進んでいるようだ。
一方、イーロン・マスク氏から目を離さないでほしい。
大統領が、戒厳令を布告する準備をしているまさにその瞬間に、偶然にも世界一の富豪を政府のコンピューターすべてに解き放ち、最大の選挙資金提供者であり世界最大級の人工知能企業のオーナーである人物に、政府がアメリカ人について知っているすべてのことへのアクセスを許可したというのは、単なる偶然だろうか。
誰もこれを偶然として片付けるべきではない。
ここまでです。
最後のほうにある、イーロン・マスク氏に政府のコンピューターへの全アクセス権を与えたことについては、以下の記事でふれました。
・マスク氏によるデジタル暴力革命が生み出す米国ディストピア化計画にトランプ大統領は気づいているのか?
In Deep 2025年2月13日
このイーロン氏の件はともかくとして、トランプ氏が、反乱法を発動して、米国を戒厳令下に置くのかどうかということについて、「あと3日ほど」ということになってはいるようです。
そして、話を最初のほうに戻しますと、マイケルさんの記事のタイトルは「左派が主張する陰謀論…」で始まるものでしたが、そういう、いわゆる左派の人による記事がありました。
「 2025年4月20日、米国は「後戻りできない地点」を超える可能性がある」というタイトルの記事で、とても長い記事で全部をご紹介するのは難しいですが、著者の方は以下のように書いています。
2025年4月20日、米国は独裁政権への最終段階を開始するかもしれない。
その日は、ドナルド・トランプ大統領の諮問委員会が、反乱法を発動すべきかどうかについての調査結果を発表すると予想されている。
反乱法が発動されれば、トランプ大統領は国内に軍を展開させ、戒厳令を敷くことができるようになる。
そして、彼の在任期間の 2か月が示すように、彼は単なる法的な意見にとどまるつもりはない。
同じ日か翌日には、反乱法を正式に宣言し、国境とおそらくは民主党支持の都市の管理を回復するという名目で自由を制限し、より大きな計画を実行に移す大統領令が出されるものと予想される。
もちろん、これは民主主義への攻撃として捉えられることはないだろう。権威主義的な政権奪取が常にそうであるように、危機への必要な対応として扱われるだろう。
しかし、一度そうなったら、もう後戻りはできない。
もう後戻りのできない地点となるだろう。
そして、仮に反乱法が発動された後の展開として、著者は 8つの段階をそれぞれ詳しく書いています。それぞれ要約しますと、以下のように「なるだろう」としています。
反乱法発動後の著者の予測
1. 抗議のために、左派や中道派の平和的なデモが各地で展開される。
2. 抗議活動はすぐに暴力的になり、さらに(反対勢力から)扇動者が潜入させられ、一種の偽旗作戦が展開される。
3. 抗議活動の暴力化を受けて、大統領が戒厳令を宣言する。
4. 野党指導者の大量逮捕。
5. 軍隊と州兵が主要都市を制圧。
6. 報道検閲とメディアの全面統制。
7. 国境が閉鎖され、反体制派は、パスポートなどを剥奪され、国内に閉じ込められる。
8. 2026年の中間選挙は国家安全保障上の懸念を理由に中止される。
映画みたいな展開を想像されているようですが、じゃあ、絶対にそんなことはないのかというと、ここまでのトランプ氏の行動や思考(憲法や国際的合意をわりと簡単に無視することなど)を見ていると、絶対ないともまた言えないような気もしないでもない、というような曖昧な感想はあります。
まあしかし、実際には、「4」とか「5」に行く前に、内戦的な状況に次第になっていく可能性も強いのかもしれません。
いずれにしても、日本時間で 4月21日までには、すべてがわかるわけですので、これ以上あれこれと予測しても仕方ないところではあります。
そういえば、投機家で作家のダグ・ケイシーさんは、最近のインタビューで以下のように述べていました。
これは、あくまで国際関系についての意見ですが。
ダグ・ケイシー氏のインタビューより
トランプ氏は取引の術については多少理解しているかもしれないが、経済や歴史については何も知らない。
トーマス・ジェファーソン(第三代米大統領)の「アメリカ合衆国は全ての者の友であるべきであるが、誰の同盟者にもなってはならない」という言葉を彼に伝えてあげれば良いだろう。
あるいは、ジョン・アダムズ(第二代米大統領)の「我々は決してドラゴンを狩って外国へ行って倒すべきではない」という言葉を彼に伝えてあげれば良いだろう。
アメリカはどうなっていくのですかね。
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