アメリカにある「物」は中国製ばかりだという現実の中で、いよいよ関税戦争の影響が現れる時期が到来
中国からの輸入が停滞し物が手に入らなくなるようになる。同時に価格の高騰が起きハイパーインフレの懸念がある。
アメリカへの影響は今週後半あたりから始まる
アメリカの中国に対するきわめて高い関税が発動されてから、おおむね 2週間くらい過ぎましたが、アメリカでその影響が出てくるのは、今週あたりからになると見られています。
貨物は基本的に船でやって来るので、そのタイムラグからの計算です。
少し前に、米 CNBC の報道をご紹介しましたが、要点で以下のように書いていました。
小売業の専門家によると、中国との貿易戦争がより広範囲に停止しなければ、家具、玩具、衣料、履物、スポーツ用品などを含む米国企業にとって損害はまもなく「取り返しのつかない」ものとなるだろう。
全文は以下の記事にあります。
・「対中関税は、まもなく多くの米国企業に取り返しのつかない損害をもたらすだろう」と米国内で報じられているブーメラン戦争の行方
In Deep 2025年4月22日
このような影響が、今週の後半あたりから順次出てくる可能性があるということになります。
米ゼロヘッジは以下のように書いています。
2025年4月26日のゼロヘッジより
週末(4月26日までの週)が近づくにつれ、アメリカでは静穏な状況が続いている。韓国の中央日報は、中国財務省の高官が本日ワシントンD.C.の米国財務省本部に姿を現したと報じている。
米中当局者によるこの会談は、太平洋を席巻する貿易戦争の衝撃の前夜に行われ、ロサンゼルス港が最初の打撃を受けると見込まれている。高頻度データによると、その影響は来週中に始まり、週を追うごとに強まるとみられる。
…ロサンゼルス港からの高頻度データによれば、145%の関税によって引き起こされた中国での工場閉鎖や出荷停止と、コンテナ化された貨物が巨大な貨物船で太平洋を横断するのにかかる時間との間のタイムラグが主な原因で、中国から米国への輸出に重大な影響が来週から始まることを示唆している。
次に起こり得る事態としては、南カリフォルニアとエンパイア・インランド倉庫地区のトラック輸送業界全体に下押し圧力がかかるとみられる。ゴールドマンが先に指摘したように、多くの企業の在庫は 2~ 3カ月分だが、ロサンゼルス港の混乱が消費者に伝わり、パニック買いが始まれば、すぐに底をつく可能性がある。
この夏には短期的なインフレの急上昇さえ起こる可能性があるが、しかし、それは一時的なものにとどまる可能性が高いだろう。
それで、現状で一体どんな状況となっているのかを、米作家のマイケル・スナイダーさんがいろいろな引用を通じて伝えています。
ご紹介します。
業界関係者が、今後の供給不足がなぜこれほどまでに深刻になるのかを解説した
An Industry Insider Explains Why the Coming Shortages Are Going to Be So Crazy
economiccollapse.report 2025/04/25
米国は 2024年に中国から 4,380億ドル (約 63兆円)相当の商品を輸入した。
突然、その貿易の大半が遮断されようとしている。
中国製品への関税は現在非常に高く、中国企業が米国に製品を輸出することはもはや経済的に意味がなく、米国企業が中国から製品を輸入することも、もはや経済的に意味がない。
その結果、コンテナの予約は完全に急落し、小売店の CEO は米国中の店の棚が「すぐに空になる」と警告している。
確かに、小売業者は可能であれば他の供給元から代替品を見つけようとするだろう。しかし多くの製品の場合、中国で作られたものは他のどこでも作られていないのが現実だ。小売業者が既存の在庫レベルを使い果たすと、不足が生じ始めるだろう。
もともと、米国は中国との貿易を始めるべきではなかったと私は考えている。そして、将来、中国との貿易がなくなる日が来ることを心から願ってもいる。
しかし、現時点では、私たち米国は中国に深く依存している。誰もこれを否定することはできない。
私たちの経済は文字通り、中国からの輸入なしには正常に機能しない。そして今、それらの輸入品のほとんどは海を越えて来なくなる。
中国からの輸入品のほとんどは、 10のカテゴリーに分類される。
・電気機械およびテレビ部品:1,249.7億ドル、中国からの総輸入額の 28%
・原子炉部品および機械器具: 820億ドル、中国からの総輸入額の18%
・玩具、ゲーム、スポーツ用品: 300.3億ドル、中国からの輸入の 7%
・プラスチック: 192億9000万ドル、中国からの総輸入額の 4%
家具、ランプ、プレハブ建築物: 180億5200万ドル、中国からの総輸入の 4%
・自動車: 168億5000万ドル、中国からの総輸入額の 4%
・鉄鋼: 119億8000万ドル、中国からの総輸入額の 3%
光学部品および写真部品: 118億8000万ドル、中国からの総輸入額の 3%
・衣料品: 99億9000万ドル、中国からの総輸入額の 2%
・靴: 97億8000万ドル、中国からの総輸入額の 2%
なお、米国で販売されているオモチャの 80%は中国で作られていることをご存知じだろうか?
今年後半にオモチャが必要になる予定がある場合は、今のうちに買いだめしておくといいかもしれない。
中国から米国へのコンテナの予約はすでに 「わずか 3週間で 60%以上も急落した」と以下のように報じられている。
報道より
トランプ政権が米国からの中国輸入品に新たな関税を課したことを受けて、中国と米国間のコンテナ輸送は前例のない混乱に直面しており、業界リーダーらはサプライチェーンへの広範な影響と、パンデミックに匹敵する経済的影響が生じる可能性があると警告している。
フレックスポートの創業者兼 CEO であるライアン・ピーターソン氏によると、中国から米国への海上コンテナの予約数は、新関税の発効からわずか 3週間で 60%以上急減したという。
この劇的な減少は、4月9日に発効した相互関税の導入を受けてのものであり、この関税は中国向けが 145%、その他のすべての発地向けが 10%となっている。 gcaptain.com
今日は、業界関係者からの洞察をいくつか共有したいと思う。
モルソン・ハート氏は、ヴィアハート社という教育玩具会社の創業者兼社長だ。彼が先日、私たちが直面している現状について非常に興味深い分析を投稿したので、 この記事で彼の Twitter 投稿全文をご紹介することにした 。
モルソン・ハート氏の投稿より
ホワイトハウスは自身と国を悪い状況に陥れているが、まだそれに気づいていない。
4月10日前後に、中国と米国間の貿易は停止した。
コンテナが中国からロサンゼルスまで届くまでには約 30日かかる。
海路でヒューストンまで 45マイル、鉄道でシカゴまで 45マイル。
海路でニューヨークまで 55マイル。
つまり、4月10日に行われたことによる経済効果は 5月10日頃まで現れないということだ。
その頃には(すでに始まっているが)、トラック輸送の仕事は枯渇するだろう。コンテナの荷降ろしに人手が不要になり、一部の商品が在庫切れになり、配送に必要な労働力が減少するため、倉庫では人員削減が始まる。
これらはすべてロサンゼルス地域から始まる。
約 2週間後にはシカゴとヒューストンにも到達し始めるだろう。
その 3週間後の 5月31日にホワイトハウスが、「思った通りにはいかないようだ。関税はゼロに戻せ」と考えを変えたとしよう。
そして、中国側もまた、「過ぎたことは過ぎたこと、元の状態に戻る」と言うとしよう。
さらには、注文がキャンセルされて困った中国の工場は皆、「問題ありません。製造して発送します」と言ったとしよう。
問題は、中国と工場が何事もなかったかのように経済関係を再開するという最も好ましい状況下でも、経済活動が回復するまでには少なくともあと 30日はかかるということだ。
そして、それはロサンゼルスだけのこと。
シカゴ/ヒューストンでは、さらに 45日間待つ必要がある。
その時点でニューヨークは 4月10日以前のコンテナを受け取っているため、港湾、中国製品のトラック輸送、倉庫保管において 50日間( 5月31日から 4月10日を引いた期間)経済活動がゼロになる。
状況全体はロックダウンに少し似ている。一度閉鎖してしまうと、経済活動を元の状態に戻すには長い時間がかかる。そもそも元に戻せるかどうかも分からない。
そしてまた、これは、他では買えないものを生産する中国とその工場が、何も起こらなかったかのようにすぐに再稼働すると仮定しているが、それはありそうにない。
まるでレンガの壁に向かって猛スピードで走っているのに、車の運転手はまだそれに気づいていないような感じだ。
彼が気づいたときには、ブレーキを踏むには遅すぎるだろう。
(※ 訳者注)この投稿は、確かにモルソン・ハート氏が X に投稿したものですが、調べてみると、もともとは、ハル・ターナーという人が、記事で投稿したもので、その引用のようです。
私たちがついにその壁にぶつかったとき、何百万人もの人々が激しく怒ることになるだろう。
米国で何かを作り始めるべきだと多くの人が提案しており、私もそれに同意する。
しかし、現実には新しい工場を建設するには長い時間がかかる。
その後の投稿で 、モルソン・ハート氏はこれについてコメントした。
モルソン・ハート氏の投稿より
レゴはアメリカに工場を建設している。
彼らは 2021年に場所を探し始めた。
当初は 2025年後半に生産を開始する予定だった。
彼らは現在 2027年の生産開始を予測している。
この世界最大のおもちゃ会社がアメリカで製造するのに 6年かかった。
新しい工場が建設されるまで何年も待つことはできない。数カ月後には本格的な危機の真っ只中に陥ることになるからだ。
たとえば、 車を修理する必要があるのに 、必要な部品の価格が 3倍になっていたり、まったく入手できなくなっていたらどうするといいのか?
FOXビジネスの報道より
「ブレーキパッドやバッテリーからバンパーやセンサーまで、車の修理やメンテナンスに使用される部品の多くは輸入されている」と、自動車雑誌の編集長ジェニー・ニューマン氏は FOX ビジネスに語った。
「これらの部品に関税が課された場合、サプライヤーは修理工場やディーラーのサービス部門に追加コストを転嫁すると予想される」
ニューマン氏は、これにより消費者の修理費が上がるだけでなく、部品の入手が困難になったり在庫が削減されたりすれば、待ち時間が長くなる可能性もあると述べた。
中国からの輸入品に対する超高関税によって混乱をきたすサプライチェーンは数千に及ぶ。
本格的なメルトダウンを望まないのであれば、中国と合意に達する必要がある。
しかし残念ながら、中国は 現在米国との交渉は行われていないと公に述べたばかりだ。
報道「国は米国と貿易戦争で交渉していないと北京が発表」より
ドナルド・トランプ大統領が最近、中国の輸入品にかかる 145%の関税を「大幅に」引き下げる可能性を示唆したにもかかわらず、中国は米国と関税をめぐって交渉していないと中国政府は 4月24日に宣言した。
AP 通信によると、中国商務省の何亜東報道官は「米中貿易交渉の進展に関するいかなる主張も、事実に基づいたものではなく、風を捉えようとするだけの根拠のないものだ」と述べた。
「一方的な関税引き上げ措置は米国が開始したものだ。米国が真に問題を解決したいのであれば、国際社会と国内各派の理性的な声に耳を傾け、中国に対する一方的な関税措置を全面的に撤回し、対等な対話を通じて意見の相違を解決する道筋を見出すべきだ」と報道官は続けた。
我々は中国にこれほど依存するべきではなかった。
数十年にわたる非常に愚かな決断のせいで私たちはこのような状況に陥ってしまった。
今、私たちは中国からの輸入品を切実に必要としているが、近い将来、そのほとんどは米国にやって来ないだろう。トランプ大統領はグレン・ベック氏に対し、自分がすべてのカードを握っているので 交渉する必要はないと感じていると語ったばかりだ。
報道より
「交渉する必要はない。私は敬意を持って人々と話し合っているが、交渉する必要はない」とトランプ氏はフォックス・ニュースの元司会者グレン・ベック氏に語った。
「つまり、我々は人々が来て買い物をしたくなるような巨大な店であり、アメリカ合衆国だ。我々は最も裕福な消費者を抱えている。そうだろう?」と大統領は続けた。
トランプ大統領は現在「 70カ国」と交渉中だと述べた。
「我々は交渉中で、大きな敬意を示しているが、最終的には合意に至るかもしれない。だが、それは私が価格を設定し、『アメリカ合衆国に奉仕する特権に対して支払う金額はこれだ』と言うだけのことだ」とトランプ氏は語った。
中国との合意が早急に成立すれば、被害は最小限に抑えられる可能性が極めて高い。このようなことが本当に起こったらとても嬉しく思う。
しかし、中国との合意が早急に達成されなければ、我々は多大な苦痛を経験することになるだろう。
太平洋を横断するコンテナ輸送量はすでに劇的に減少しており、時間は刻々と過ぎている。
ここまでです。
この記事にありますように、アメリカ、あるいはアメリカ人は非常に多くの「物」を中国に依存している状態であることがわかります。
それに加えて、「処方薬」もそうです。特に必須医薬品については、激しく中国に依存しています。
・アメリカは必須医薬品の75%を輸入に頼っており、そのほとんどは中国とインドからのもの
BDW 2025年4月22日
こういうようなもののアメリカ国内での流通に、今週後半くらいから少しずつ影響が出てくるとみられますが、もちろん、その中で、ホワイトハウスが、突然「中国への関税を廃止する」と述べたなら、混乱も短期間で終わるのでしょうが、今のところはその兆しはないようです。
しかし、中国企業も大変な状態となっているようで、昨日の新唐人電視台ニュースは、以下のように報じていました。
中国の事業主が嘆く:注文の80%が停止、国内販売は海外販売に取って代わることができない
米中関税戦争は中国企業、特に対外貿易企業に甚大な影響を及ぼしている。
段ボール製消耗品を製造する企業の経営者は、注文の 80%が停止されたと明かした。毛布を製造している別の経営者は、国内での販売は海外での販売に取って代わることはできないし、国内での販売の注文を得ることも難しいと率直に語った。
…また、外国人の消費観念は中国人のそれとは大きく異なるとも述べた。(米国人は)毛布は数か月使用したり、1、2週間で捨てたりすることもあるが、中国人は数年間使用した後でも買い替えを躊躇することがある。
「(米国と中国では)消費習慣が異なるため、国内販売をどれだけ拡大しても、海外販売より大きくなることはできず、海外なしではやっていけないのだ」
関税の圧力に対処するため、多くの外国貿易会社は国内販売への切り替えを余儀なくされている。しかし、中国経済の継続的な衰退と消費の低迷により、企業は生き残りをかけて激しい価格競争を繰り広げ、悪循環を生み出している。
…東莞市の徳宏電器製品は 4月11日から操業を停止し、全従業員が 1カ月間休暇を取ると発表した。
杭州に拠点を置き、主に米国で販売する内視鏡キットを製造しているステラーメッド社は、従業員に対し新しい仕事を探すよう指示した。
同社代表は「この状況がいつまで続くか分からない。ただ待って、何が起こるか見守ることしかできない。我々は全く無力だ」と語った。
米国も中国もどちらも、すでに大変なことになっているのですけれど、どちらの国にしても、最初に苦しむ、あるいは、これから苦しむのは、主に中小企業や、労働者、トラック運転手などからです。
実際にどうなっていくのかは、今週から来週のロサンゼルスなどの状況でわかるのかもしれないですが、アメリカにおいては、わりと大変な時期となる可能性もあるのかもしれません。
そして、世界全体が巻き込まれる混乱へと発展していく可能性も、それなりにあるのかもしれません。
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